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妹じゃないです
「わざわざ見に来た甲斐があったか・・・花形」
湘北と角野の試合、ガラガラの観客席に名字と並んで座っていると後ろから聞いたことのある声が聞こえた。振り向くと、自分よりも大きな男が俺たちを見下ろしていた。
「まあな、魚住」
ポジションが同じセンターの魚住とは選抜や練習試合などで対戦することも少なくは無かった。だからこうして会場などで会えば話すくらいには仲がいい。
「だが相手が弱すぎる。翔陽なら200点とってるぜ」
「そうかもな」
「・・・」
例に漏れず人見知りを発動して魚住を避けている名字は、いつにも増して俺にくっついていた。というよりも、むしろ俺の腕に縋りついていた。
それまで視界に入ってなかったんだろうが、魚住は彼女を見つけて興味を持ったらしい。
「・・・妹か?」と、尋ねられて俺はつい笑ってしまった。
「いや、うちのマネージャーなんだ」
「へえ、もしかして・・・俺が怖いのか?」
「うぅ・・・」
しがみつく腕の力が強くなった。申し訳なさそうに俯く彼女に気がついて、魚住にはそれとなくフォローしておく。
「初対面の相手にはいつもこうなんだ。人見知りでな」
「・・・なるほど」
「1年の名字だ。悪いが大目に見てやってほしい」
「ああ、わかった」
もともと細かいことを気にしない魚住がそれ以降、彼女について詮索することはなく。そのまま自分のチームメイトの元へ向かった。
「さて、帰るか」
「・・・はい」
ゲームセットの笛が鳴りそちらに目を向けると、角野は24対160で大敗を喫していた。