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5月19日
「集合!」
キャプテンの召集、ひいては監督の召集に翔陽バスケ部の大人数が整列する。
その自分たちの前で、藤真は他の誰よりも毅然としていた。
「今日から県大会が始まった。つまり、インターハイ予選だ」
いつものふざけた藤真とは違う。無駄な音のない静かな体育館で、彼のその凛とした声はよく響いた。
そしてその言葉通り、すでにインターハイへの切符をかけた戦いが始まっていた。
「俺たちは・・・今年こそ海南を倒す。そのためにここまできた」
まっすぐに部員たちへ向けられる視線。近くで誰かが息を飲む気配があった。
ふいに俺と視線が合うと少しだけ、ほんの一瞬だけ、藤真の口角が上がったことに気が付く。そして何よりもその闘志をみなぎらせる目に、俺も知らずと笑っていた。
「翔陽は第2シードだ。相手はまだ分からない。だが・・・」
「相手がどこだろうと関係ない。今年こそ翔陽がNo.1、だろ?」
俺がそう言うと、藤真をはじめ全員が強く頷く。端の方にいた名字を見つけると、彼女も同じようにして大きく頷いているのが分かった。
「・・・緒戦は4日後だったな」
「お前ら気合入れろよ」
俺たち3年にとって最後の夏が始まった。