俺と彼女はカルガモ親子 | ナノ
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子ガモの受け渡し




「花形ちょっといいか」
「どうした藤真。部活のことか?」


「あー・・・いや、実はさ」


歯切れの悪い藤真は珍しい。こいつはいつもハキハキとものを言うから。
不思議に思ってると、藤真のすぐ後ろで何かが動いた。いや正確には誰かが、だ。


「ほら、出てこいよ」
「う・・・」
「花形は大丈夫だって。いい奴だから」


そう言って藤真が後ろから引っ張り出したのは小さな女の子だった。とは言っても、翔陽の制服を着ているから間違いなく高校生なんだろうけど。

(1年か・・・?)


「この子は?」
「俺の妹」


俯いたままの女の子を自分の前に立たせて、逃げないようにその両肩を手で押さえている。

ところで、藤真に妹なんていただろうか。長い付き合いだがそんな話は聞いたことが無い。
そんな俺の疑問が顔に出ていたのか、「・・・のような近所の幼馴染だ」と補足をしてくれた。なるほど、俺が知らなかったわけだ。

自己紹介くらいしろ、と藤真に言われ小さな声で名前を言う女の子。終始視線が合うことは無かった。


「名字名前、です・・・」
「花形透だ」
「ちなみに、今年入学したばっかの1年生な」


これが名字と始めての会話で。俺が高校3年になってすぐの頃のことだった。



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