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親ガモの戸惑い
「名前が好きって言ってきた?」
「・・・ああ」
「ふーん」
べつに告白をされたワケじゃないし、返事をする必要もない。俺たちの関係は変わらないし、昼だって今まで通り一緒に食べるだろうけど。
少なくとも俺は、好きだと言われてかなり動揺していた。
「アイツの性格考えたらそんなこと言い出すの珍しいかもな。よっぽど花形に懐いたってことだろ」
気にする必要はない、藤真はそう言って俺の肩にぽんと手を乗せた。不思議なことに、ただ肩を叩かれただけで先ほどまでの息苦しさがなくなり、戸惑いもキレイに消え去っていた。
「そう、だよな」
「まあ・・・もし本当に名前がお前を好きになってもまだやらねーけど」
もちろん恋愛って意味で。そう続けた藤真は試合のときの様に不敵に笑っていた。
「・・・怖い兄貴だな」
「可愛い妹ですから」
ちょうど教室に現れた名字を見つけて、すぐに立ち上がる。彼女の頭をこれでもかというほど撫でた後、「・・・っていうか」と何かを思い出したようにこちらを見上げた藤真。
「この短期間でなんで俺と同じになるんだよ!」
それは俺じゃなく名字に言ってくれ、と心から思った。