俺と彼女はカルガモ親子 | ナノ
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同じくらい




「ふふっ・・・」


隣には、いつもに比べて随分と機嫌がいい様子の名字。思えば朝練のときからずっとこんな感じだった気がする。


「花形さん、今日はとっても良いお天気、ですねっ」
「ああ、そうだな」
「今日の卵焼きは、上手に焼けたんですよ」


俺は、終始にこにこしている名字を微笑ましく思いながら、相槌を打っていた。
彼女が上手く焼けたと言う卵焼きを横目で見ると、確かにキレイに巻かれていて旨そうだ。


「あの・・・私、花形さんが、好きです」
「そうか・・・・・・は?」


それまでと同じように返すが、一拍置いて、おかしな発言が聞こえたことに気がついた。驚いて名字に視線をやると、彼女は予想に反してあまりにも普通の表情だった。


「・・・今なんて?」
「え?あ・・・好きです、と」


今度もべつに照れる風でもなく、しれっとのたまう名字。
俺の耳がおかしいのか、それとも彼女がおかしいのか。半ばパニックに襲われている自分には判断がつかず、ただ黙っているしかなかった。


(彼女にかぎって、告白ってことはないだろう・・・ないよな?)


よく藤真には「さすが学年主席」なんて言われるが、こういう時に働かない頭なんてまるで役に立たない。

すると名字は慌てている俺に、最後にこう言った。


「・・・健司くんと同じくらい、好きなんです、よ」


それはやっぱり、告白なんかではなくて。彼女なりの感謝の現れとでもいうのだろうか。
何にせよ早とちりをした自分が恥ずかしくて、それを隠すために深いため息をついた。


(藤真と同じ・・・)


そして未だ収まらない鼓動を、今度は咳払いで誤魔化した。



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