俺と彼女はカルガモ親子 | ナノ
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みんなで寄り道




今やバスケ部の中なら人見知りすることもなくなった名字は、前よりも楽しそうにしていることが多くなった。

まだまだ対人スキルは人並みとは言えないがそれでも、彼女の笑った顔を見て俺や藤真はホッと胸を撫で下ろすのだ。



「・・・腹減ったな」
「俺も」


体育館のメンテナンスとやらで急きょ部活が出来なくなり、藤真や高野を筆頭に仲のいいメンバーでファミレスに向かっていた。そこにはもちろん名字もいて、俺のすぐ隣を歩いている。

これだけデカい男たちに囲まれていると、小さな彼女はさながら捕らわれた宇宙人のようで、俺は気付かれないように笑った。



「何食うか決めた?」


メニューを覗き込んで悩む藤真にみんなが順に答える。


「俺ハンバーグセット」
「カレー」


いつもファミレスで同じものを頼む高野と永野は、もはやメニューを見ることもなかった。
一年の時から変わらない二人に、いいかげん飽きないのだろうかと疑問を抱くがそれを聞くことは無かった。


「俺は日替わりセットにする」
「長谷川は日替わり・・・じゃあ・・・俺はコレにしよ、チキン南蛮」
「それも美味いよな」


ようやく決めた藤真が店員を呼ぼうとボタンに手を伸ばすと、俺の方を振り返った。


「あ、花形は?」
「カレーにする。それより、名字は決まったのか?」


隣の名字を見ると、メニューのデザートに目を向けてにこにこしていた。


(・・・相変わらず、食事の時はいつもの3割増しで楽しそうだな)


「そいつはオムライスしか食べねーんだよ。昔っから」
「・・・そうか」


当たり前のようにそう言う藤真に、さすが幼馴染だと俺や他の面々も感心した。
言われてる当人たちはそんなこと露ほども気にせずに、一緒になってデザート決めに勤しんでいる。




「ご注文を承ります」
「「チョコパフェふたつ」」

「それは後にしろ」


ごねる藤真と名字を宥めていた俺を他の三人が気の毒そうに見ていたことに、気付くことは無かった。



「花形がお守りしてくれてるから、」
「俺たちは楽だよな」
「・・・がんばれ、花形」



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