俺と彼女はカルガモ親子 | ナノ
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餌付けは困ります




「名字はクッキー好きか?」
「!すき、ですっ」
「これ貰ったやつだけど、俺はいらないから・・・やるよ」


練習後の帰り道、長谷川に渡されたクッキーを手に小さくにやけている名字。
そういえば今日はどこかの組が調理実習だったとかで、藤真が女子からそれを貰っていたことを思い出した。

(・・・長谷川も貰ってたのか)


「よかったな、クッキー」
「はい!長谷川さん、優しいです」
「名字は甘いものも好きなのか」
「食べものは、全部好き、です!」


にこ、と微笑んでクッキーに頬ずりしている姿は、見ているこっちの気が抜けそうなくらいに幸せそうだった。


「・・・クッキーひとつで喜びすぎじゃないか?」


俺がボソッと言ったそれは聞こえていたのか、いないのか。恐らく後者なのだろう、名字はさっそく袋を開けて中のクッキーを頬張っていた。


(これじゃ、まるで餌付けだな)


「花形さん、おいしいです」
「そうか」
「・・・食べます、か?」


いや、お前が食え。そう言って頭を撫でてやると、彼女は嬉しそうに目を細めて次のクッキーに手を伸ばした。



後日、ものの見事に餌付けされた名字は、長谷川に羨望のまなざしを向けていた。

(・・・こいつに食べ物を与え過ぎないよう、言っとかないとな)



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