南くんのとなり | ナノ
放課後の約束
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テスト前になって、約束通り南君と勉強を始めた放課後。私の教室で机を向かい合わせにすると、その近い距離にもう心臓が高鳴っていた。

最近は彼にドキドキすることが多くて、そのせいで寿命が縮んでるんじゃないかとさえ思うくらいだった。



「なんや二人でコソコソと!俺も仲間に入れてえや」


まずは英語にしよっかと私が言ったすぐ横で、いつの間にか仁王立ちしていたのは、眉をひそめたクラスメイトだった。


「き、岸本君・・・帰ったんじゃ?」


私の質問にニカッと笑った岸本君は、ガタガタと机を運んで私たちの隣にくっつけた。それをなにも言わずに眺めていた南君は、なんだか少し不貞腐れてるようにも見えた。


「いやな、テスト前やしどうせなら南ん家で勉強しよ思ったんや。でもこいつのおばさんがまだ帰ってへん言いよるから、ピンときたっちゅーわけや。名字とおる、ってな」
「それで学校に戻ったんだ。私といるなんて、よく分かったね」
「・・・」


相変わらず楽しそうに笑ってる岸本君は、「まずは英語からか!名字、よろしく」と言ってせっせと教科書を取り出していた。
前にもこうして三人で勉強していたし私は別に困ることもないので分かったと頷いて、自分の授業ノートを開いた。

二人のためにさっそく英単語をまとめていた私には、この展開に岸本君を睨みつけていた南君とそれを笑ってかわす岸本君の姿は見えていなかった。




そうして数日が過ぎ、いよいよテストを明日に控えた今日。ふと動かしていた手を止めた南君が、私の方を見た。その視線に気が付いた私は顔を上げる。


「名字は、今年の夏も向こう帰るん?」
「え・・・ああ、神奈川のこと?」


いきなりの質問に少し間をあけてから、「ううん」と首を横に振った。いつの間にか岸本君もペンを置いている。

毎年夏休みに帰省していた神奈川の祖父母の家には、今年は両親の都合で行けないことになっていた。他に私が受験生だからというのもあるし、そして何よりも私には帰れない理由があった。


「・・・広島であってるよね?インターハイ」
「お、おん。もしかして、」
「実はね、勝手に観に行こうと思ってたの」
「来てくれるんか名字!」


バスケ部のインターハイ。去年行けなかったのが心残りで、今年は絶対に観に行こうと思ってた。

本当は内緒にしておこうと思ってたけど、喜んでくれてる南君と岸本君を目の前にすると、言って良かったと思う。


「これで、堂々と行けるね」


私がそう言って笑うと、二人も嬉しそうに笑ってくれた。


「最前列で見いや!」


自信満々の岸本君に「声がでかいねん」と冷静につっこんだ南君と目が合って、私は照れた顔を誤魔化す様に「その前に勉強しよう!」とペンを握り直した。



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