南くんのとなり | ナノ
南くんと帰り道
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バスケ部がインターハイに出場するというのは学校中が知っていることで、校内では既にその話で持ち切りだった。
それはもちろん私も例外じゃなくて、先日の試合模様を友人に話しながらより一層南君への思いを募らせていた。


「・・・じゃあ、優勝は土屋んとこなんや?」
「うん。やっぱり強かったよ、大栄学園」
「へえ・・・」
「どうかしたの?」


土屋なあ、と呟く友人に首をかしげれば、口に手を添えた彼女が確かめるように私を見た。その疑うような視線に私は一歩後ずさる。なんでそんな目で見るのかな。


「な、何・・・?」
「土屋とは、なんもないんよな?」
「あ、あるわけないよ!」
「でも去年の文化祭は一緒にまわったんやろ。他でも何回か会ったって・・・」
「全部偶然だから・・・!」


「・・・せやったらええけど」


そう言って納得してくれたらしい友人に苦笑いをしつつ、何をそんなに疑われてるんだろうと不思議に思った。

(・・・土屋君のことを想ってたのは、もうずっと昔のことなのに)





「名字っ」


帰宅しようと歩いていた私が学校の校門を出ようとしたところで、後ろから誰かが駆けてくる音がした。前を向いていた私は自分の名前を呼ばれて振り返る。


「南君・・・そんなに急いでどうしたの?」


私の隣に立ってそのまま歩き出した南君に並んで、背の高い彼を見上げた。部活が休みですぐに帰る予定だったらしく、たまたま私の後ろ姿を見つけて追いかけたのだと教えてくれた。
一緒に帰ろうやと笑う南君に、私がノーと言う筈が無かった。

(どうしよう・・・嬉しい)


あまりの嬉しさでにやける顔をなんとか抑えながら、もうすぐ始まる試験なんかについて話す。
もうそんな時期なのかと言いたげにため息を吐く南君だけど、すぐに出会った頃から変わらないあのニヤッとした笑みを口元に浮かべていた。


「今回のは特に張り切らなあかんねん」
「・・・?」
「今は不良が多い言うても、豊玉は一応名門校やからな。赤点が多いと試合に出さしてくれへんらしいわ」


バスケ部はアホばっかやからピンチやねん、と言いながらもやっぱり笑っている南君。その表情にときめいてしまうのは、私が彼を想う気持ちが大きいからに違いない。


「そういえば、一年の時も言ってたっけ?・・・あの時は英語の追試だったよね」


私が南君を好きになったきっかけの一つを思い出しながら、懐かしさに目を細めた。


「一年の時から名字に助けてもらっとるっちゅーことやな。おおきに」
「お互い様だけどね」
「ありがとうついでに、また一緒に勉強せえへん?」
「えっ・・・」

「・・・もう誰か約束しとった?」


こちらに向けた南君の顔が悲しげで、それを見た私は慌てて首を振った。誰とも約束はしていないし、むしろ私には願ったり叶ったりだ。



「南君がインターハイに出れるかどうかは私にかかってるってこと、だね?」
「・・・そうゆうこと、やな」


私の冗談まじりのそれによろしくと続けた南君が、フッと微笑みながら手を伸ばした。私の頭に置かれたその手がぽんぽんと髪を撫でる。


(う、わ・・・)


突然の行動に私は驚くやらドキドキするやらで、家に着くまで彼の顔をまともに見ることが出来なかった。




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