南くんのとなり | ナノ
イチゴの飴ちゃん
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今朝見た夢の内容が美味しいと評判のケーキバイキングで山ほどケーキを食べているものだった事とか、目覚ましが鳴る前に自然と起きられた事とか・・・いつもの単純な私だったら喜ぶようなことがほんの些細なものに思える程に、いまの私は浮かれていた。



「んふふ」
「・・・あえて聞いたるわ、なんかいい事あったん?」


朝からご機嫌の私が授業の合間に鼻歌をうたってると、目の前にいた親友は心底呆れたような顔をして私のことを見ていた。やだなぁ、そんな風に見つめられても今の私には効かないんだから。



「実はね・・・」


私が浮かれている理由を話す前に、南君の恋人かもしれない人を見かけて落ち込んでいた事を言うと、友人は顔をしかめて「なんでうちに言わんかったん」と私に詰め寄った。続きがあるからと、とりあえず落ち着かせて昨日の出来事を順を追って話していけば、聞き終わる頃にはしぶしぶ納得してくれたようだった。



「・・・南のお姉さんなあ」
「綺麗な人だったよ。それに、すごく気さくで」


はじめこそ勘違いのせいで緊張してたけど、話してみればなんのことはない、優しいお姉さんだった。


私は昨日の帰り、南君に送ってもらう前に、彼が止めるのを押しきってもう一度お店の方に顔を出した時の事を思い出す。


「もう帰るん?」
「はい・・・あの、今日はお仕事中にすいませんでした」
「かまわへんよ。むしろ、烈のためにわざわざありがとうな。えっと・・・下の名前は?」


にこにこ、感じのいい笑顔を向けられてなんとなく照れてしまった私は「名前、っていいます」と幾分か小さな声で言った。


「名前ちゃん、可愛い名前やね。アホな弟やけど烈のこと宜しくなぁ」


はい、これ持っていき。
そう言ってウインク付きで手渡された飴を私は大事にポケットにしまった。


「ありがとう、ございます・・・」


私はニヤける顔をなんとか誤魔化しながら、お店の入り口に待たせていた南君のところへ戻った。その時から浮かれた様子の私に彼は首を傾げていたけれど、私が「行こう」と言って先に歩き出せば、何も言わずにそのまま隣に並んだ。




ポケットに入れていた飴を口の中に放りこんだ私は、まだ緩む口元を隠すこともなかった。


「まあとにかく、一つ不安が無くなって良かったな」
「うん」
「あのふざけた先生のお陰やん。ある意味」
「・・・うん。そうかも」
「たまには役に立つんやなぁ」


確かに、思えばあの先生が私をパシらなければ起こり得なかった事だなと、口の中でイチゴ味の飴を転がしながらちょっとだけ感謝した。


(甘くて、おいしい)



ふと廊下に視線を向けたとき、ちょうど通りかかった南君の元気そうな姿を見て、私の口からは自然と笑みがこぼれた。



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