南くんのとなり | ナノ
岸本くんと後輩くん
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「名前、学食行こ」
「あ、ちょっと待って」


先日始業式があって、とうとう最終学年になってしまった私たち。新しいクラスに慣れる頃には、満開だった桜も半分ほどは散ってしまっていた。


そんな中で私は、この毎日を少し物足りなく感じていたりする。



「はあ・・・やっぱりクラスが違うと全然会えないんだね」
「せやな」


離れてしまっていた親友とは再び同じクラスになって、ホッと一息ついたのは記憶に新しかった。ただしその代わりといってはなんだけど、南君とは残念ながら隣のクラスになってしまって。
去年と違って会える日は格段に少なくなっていた。


「こればっかりは、しゃーないけど。岸本は同じクラスやのにな」
「それはそれで嬉しいんだけどね。でも・・・はぁ・・・」


しばらく落ち込んでいた私を見て友人は呆れた視線を送りながらも、なるべく私が彼と会ったり話したり出来るようにさりげなく協力してくれていて、そんな彼女に私はまったく頭が上がらなかった。




「なんや名字たちも学食かいな。ここ座ってええか?」


噂をすればなんとやら。図ったように現れた岸本君にもちろんと微笑みかけると、人で溢れる学食の中でたまたま空いていた私たちの隣に彼が座った。そしてもう一人、これまた岸本君と同じくらい背の高い男の子がいる。


「輝男、お前も早よ座れや。前言ってた名字やで」
「あっ!もしかして板倉さんが一目惚れしたっていう噂の「アホ!言わんでええ」・・・すんません」

「えっと・・・?」


知らない名前に首を傾げると、岸本君が「なんでもないわ」とヘラヘラ笑いながら、私のことをジッと見つめるその男の子・・・輝男君にデコピンをしていた。


(痛そう・・・)


赤くなった額を手で押さえながら、文句を言う輝男君はどうやら今年バスケ部に入部した期待の1年生だとかで、岸本君がよく面倒を見てる後輩のひとりらしかった。
その板倉さんとやらが私とどう関係しているのかが気になったけど、二人がはぐらかしたまま教えてくれそうには無かったので、私は聞くのをやむなく諦めた。

そしてふと、いつも岸本君が一緒にお昼を食べている南君の姿がない事に気が付く。


「ねえ岸本君。今日は南君一緒じゃないの?」


後輩君と雑談しながらカレーを食べていた岸本君にそう訪ねれば、あー、と歯切れの悪い声を出して一拍を置いてから「あいつ、休みやねん」と答えてくれた。
今まで南君が休んだところを見たことがない私は、内心で珍しいと思いながら、クラスが違うのはやっぱり辛いなと重い溜息を吐くしかなかった。



(・・・会えないと余計に恋しい、なんて)



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