南くんのとなり | ナノ
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南君にチョコを渡さないと!と強く思うほどにタイミングがずれてしまって、気づけば今日最後の授業が終わるところだった。授業内容なんてまるで頭に入らなくて、私は何度も何度も彼の方へ視線をやっていた。

(南君、寝てるし・・・)


英語の授業だと、いっそ清々しいほどに爆睡してしまう彼の姿に、相変わらずだと私は小さく微笑んだ。


「今日はここまで」


授業が終わり、委員長の号令で礼をする。気になって南君を見ていると、隣の女の子に起こされていた。隣の席だった頃は私も良く彼を起こしていたなぁ、と去年のことを懐かしむ。
クラスが騒がしくなって早々に帰宅したり友達と話してる人たちがいる中、私は自分の荷物を手早くまとめてから、この時のために用意していた紙袋を掴む。


そして今まさに部活に行くために教室を出ようとしていた南君を、なんとか後ろから呼び止めた。
隣にいた岸本君は、なぜか南君にニヤリと笑いかけてからそのまま先に行ってしまった。


「ご、ごめん南君。岸本君・・・先に行っちゃったね」
「気にせんでええで。・・・なんかあるんか?」


私を見下ろす彼と話すのはなんだか久しぶりな気がした。それはそうか。最近じゃいつもマネージャーの子が近くにいてなかなか話しかけることが出来なかったから。


「南君あのね・・・これ、作ってきたんだ」
「バレンタインか?」
「そうなの。去年・・・南君、食べたかったって言ってくれてたなぁと思って・・・その、友チョコ」


高鳴る心臓を無視して、なんでもない風を取り繕う私。南君はすでに何個かの包みが入った手提げを持っていて、チラッと見えた豪華なそれらの前では私が渡そうとしているチョコがとても貧相に思えてしまった。友チョコを装ってるから仕方がないけれど。


(でも、ぜったい渡さなきゃ・・・)



南君は私が差し出した包みを受け取って、少しの間ジッとそれを見つめてからフ、と表情を和らげる。


「ありがとう、名字。いつくれるんやろうって待ってた」


そう言った彼を私が思わず「えっ?」と見返すと、楽しそうに笑う南君と目が合った。


「・・・冗談や。真に受けすぎ」
「な、なんだ・・・」


ほっと息をついた私の心臓は、今もまだどくどくと激しく脈打っていて、彼に聞こえてしまわないかと不安になった。

そんな私に、彼は追い討ちをかけるようにこう言った。


「でもちょっと期待しとった」


大事に食べるわ、と言って部活に向かった彼の背を私はただぽかんと眺めているだけだった。


(・・・あんな風に笑うなんて、ずるい)



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