南くんのとなり | ナノ
今度こそ 1
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街や学校の雰囲気にだんだんと華やかさが増してきて、またこの季節がやって来たんだなぁ、と私は心の中で考える。
お店に並ぶ色とりどりのチョコレートをどれも美味しそうだと思いながら眺めていた。

彼のイメージからは意外だけど、甘いものが好きだと言っていた南君に今年こそはチョコレートを渡そうと心に決めていた。


(告白とかは、むり・・・だけど)




バレンタインデー当日。

私は手さげの紙袋の中に昨日頑張ってラッピングしたチョコを入れて家を出た。クラスの子や友人、岸本君と、あと・・・南君の分。
友チョコと称して定番のトリュフをそれぞれ包んで、その中のひとつだけにチョコレートマフィンを紛れさせていた。

あまり気合いの入ったものだと恥ずかしいからなるべくお手軽なものにして、それでも失敗しないように慎重に作ったお菓子は多分・・・美味しいはず。



「・・・去年のも良かったけどこのトリュフほんま美味しいで」
「ありがと」


朝いちばんに友人へ届けたチョコはその場で彼女の胃に収まった。なんでも朝ご飯を食べ損ねていたらしく、あっという間に無くなった。


「リベンジするんやろ?去年は勿体無いことしたもんな」
「う・・・うん」


返事をしながら私は手をギュッと握って、今年こそは!と気合いを入れた。


「・・・ちなみに、告白は?」
「しないよ!というか、出来ない・・・むり」
「やろうなー。せやかてそんなんやとあの後輩マネージャーに負けるで」


私の隣で腕組みをしてにやにやしている友人にいじわる、と言って睨み返す。 でも全然効果は無くて、むしろもっと笑われてしまった。

告白出来ないでいるのは、夏休みの終わりにショッピングモールで南君と歩いていた女の人のことが気になるから。目に焼き付いて離れないあの光景を思い出すたびに、私は胸がちくりと痛んだ。
この事は友人にも話していないから、ずっと一人でモヤモヤしてる。


(気になる、けど・・・。南君に聞けないもんね)





「どしたん名字、誰か探しとるんか?」


昼休みの終わり頃、自分の席に座りながら教室内をキョロキョロ見渡していると、前を通りかかった岸本君が私を見て首を傾げていた。


「あ、う・・・うん。南君なんだけど」
「あいつならマネージャーに呼ばれとったで」


そうなんだ、とソワソワする気持ちを隠しながら、私は岸本君にも渡すつもりだったチョコをぱっと紙袋から出す。あと残ってるのは彼と南君の分だけだった。


「岸本君って甘い物食べられる?あのね、コレ・・・バレンタインのなんだけど。あ、友チョコね!」
「なんや本命とちゃうんか?」
「と、も、チョ、コ!」
「・・・ありがたく貰っとくわ」
「うん」


食うてええか?と聞かれて頷くと、その場でヒョイっと全て平らげてしまった岸本君。


「名字、料理出来るんやな。売りもんより美味いで!」


今朝の友人の時もそうだったけど、こうして美味しそうに食べてくれる姿を見ると、とても癒された。
ありがとうと言って笑うと、昼休み終了のチャイムが鳴って彼は自分の席に戻って行った。
視線をずらすと、先ほど探していた南君がいつの間にか着席しているのに気が付く。頬杖を着いて窓の外を眺める彼を見て、心臓が少し早まった。


(・・・あとは、南君だ)



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