南くんのとなり | ナノ
会いにきた
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「どや名字、俺のたこ焼きは美味いやろ?」
「ほんと、美味しいよ」
「せやろせやろ」


得意げに頷きながらその手は器用にたこ焼きを焼いている岸本君。味見だと言って私にくれたたこ焼きは、外がカリッと中はトロリで本当に絶品だと思った。

文化祭初日の今日、うちのクラスはたこ焼き屋さんをやっていて、私は朝からずっと販売係りをしていた。その隣には、私と同じエプロン姿の南君が座っている。

(南君に、エプロン・・・かわいい)


「名字、いちいち岸本の相手なんかせんでええんやで。面倒くさいやろ」
「はは・・・そんなことないよ」


ついつい南君をぼうっと見てしまうので、急に話しかけられて内心すごく動揺していた。


「もうちょっとしたら俺ら休憩やな」
「だね。どこのお店まわろうかな?」
「・・・名字、もしひとりなんやったら、」

「たこ焼きひとつ下さい」


南君が何か言おうとしていたのが聞こえるか聞こえないかくらいのタイミングでお客さんが来たので、私は彼から視線を外した。こればっかりはしょうがないよねと自分に言い聞かせて得意の営業スマイルをそのお客さんに向けた。


「いらっしゃいませ、たこ焼きひとつ・・・です、ね?」
「うん」


ニコッと、私の営業スマイルなんかよりも爽やかに微笑む土屋君と目が合った私は、驚いて数秒固まっていた。

(・・・本当に、来てくれたんだ)


土屋君に気付いた南君も頬杖をついていた手がガクッとなっていた。


「約束どおり、名字のたこ焼き食べに来たんや」
「・・・びっくりした」


一人で来たのかと聞くと「いんや友達とやねんけど・・・」と土屋君が先を濁すので、首を傾げる私。


「彼女がこの学校の子らしいわ。速攻で置いてかれてん」


そう言って微笑んだ土屋君は相変わらず整った顔立ちをしているなあとしみじみ思った。その時急に、近くにいたクラスの女の子たちが私の周りに集まってきた。


「もしかして名前ちゃんの彼氏なん?」
「めっちゃかっこええやん!」
「ウチ知ってる!大栄の土屋君やろ?」


次々と小声で交わされる会話に、否定したり頷いたりしつつも私は苦笑いだった。
その様子を見ていた実行委員の子が、私と土屋君を見比べてから「名字さん、ちょっと早いけど休憩に行ってもかまわへんよ」と言った。


「そら助かるわ。名字、よかったら案内してくれへん?」
「え?あ・・・いい、けど」


さっきよりも笑顔になった土屋君は私の腕を引きながら、実行委員の子にお礼を言っていた。頬を染めたその子は私に意味ありげな視線を向けていて、そのすっかり勘違いしてる様子に内心でため息をつく。


「ほな、南君。名字借りるで」


去り際、南君に向いてそう言った土屋君を不思議に思いながら、私は彼をどこに案内しようかと考えていた。


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