南くんのとなり | ナノ
土屋くんと放課後
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「あと、何を買えばいいんだっけ?」


文化祭の準備のために買い出しを頼まれていた私は実行委員に渡されたメモを片手に、ひとりで駅にいた。本来はクラスの友達と二人の筈だったんだけど、風邪で欠席していたため止む無くひとりという訳だった。

(・・・私もこないだまで風邪で寝込んでたから、人のことは言えないんだけどね)



「う・・・重い」


必要なものや道具を買い揃えると結構な量になって、お店を出るのも一苦労だった。これは帰るのが大変だと深くため息をつく。



「えらい大荷物やね。手伝おうか?」


ふと目の前に影が差して見上げると、いつぞやの練習試合ぶりに見る姿があった。


「練習はないの?土屋君」
「今日は、お休み」


相変わらずニコニコしている彼は私の隣に並ぶと、いつの間にか私の手から荷物を取り上げていた。


「い、いいよ!」
「まあまあ遠慮せんと。それより、どっかでお茶でもせーへん?」
「んー・・・」


私が渋っているのを見てふ、と微笑む土屋君。「ほらほら、行こうや」と半ば押し切られる形で私たちは近くの喫茶店に入った。


「へえ・・・?文化祭の買い出しかあ」
「まあね」
「ちなみに何の店やるん?」
「うちのクラスはたこ焼きだよ」


定番やねえ、と相槌を打つと、土屋君は何か思いついたようにこちらを見た。
私はちょうど飲み終えた紅茶のカップを置く。


「豊玉の文化祭、遊びに行こうかな」
「ほんと?」
「名字のたこ焼き食べに行くわ」
「私が焼いてるかは分かんないけどね・・・」
「じゃあ、名字に会いに行く」


会いに行くと言った彼に「・・・え?」と思わず聞き返すけど、土屋君はすでに伝票を持ってレジに向かっていた。


「土屋、君!自分の分は・・・」
「今日くらいええやん。黙って奢られとき」
「でも・・・」
「僕が無理言って付き合ってもろてるんやから、これくらいさせてや」


彼のスマートすぎる振る舞いに戸惑っていると、土屋君が「じゃあ、文化祭の時にでもサービスして欲しいな」と言ったので、それに頷いて結局はお言葉に甘えることにした。



「ごめんね・・・家まで荷物持ってもらっちゃって」
「かまへんよ。最初からそのつもりやったし」
「・・・そうなの?」


どこか機嫌良さそうにしている土屋君を見上げれば、「むしろ好都合やで」と言うのでどうしてか聞き返したけど、パッと顔を逸らされてしまった。


「いや・・・こっちの話」


首を傾げる私を置いて土屋君はどんどん歩いて行ってしまって、追いかけるのがやっとだった。


「豊玉祭、楽しみになってきた」
「あ、そういえば・・・うちのクラスに南君と岸本君もいるよ?」
「え」


ピタリと立ち止まった土屋君。ギギギ、と効果音が聞こえてきそうなくらいにゆっくりと私を振り返って「・・・同じクラスなんや?」と聞くのでそうだよと頷いて返す。


「岸本君はええけど、南君は・・・」


何やらぶつぶつ言いながら横目で私を見る土屋君はいつもに比べて感情豊かだなあ、と私はぼんやりそんな事を思っていた。



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