南くんのとなり | ナノ
後輩マネージャー
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夏風邪を変にこじらせてしまった私は、結局一週間も学校を休んでいた。
元気だけが取り柄だったんだけど、今回で改めるべきかもしれないと思った。



「はよ、名字。もう顔色もええな」


まだ空いてる岸本君の席にどかりと座ったのは南君で。彼お決まりの頬杖をついて、横目で「よかった」と笑った。
朝から声をかけてくれたのもそうだし、笑いかけてくれたことも私は嬉しくて、休む前の気まずさなんてすっかり忘れて微笑み返した。

南君は一瞬無言になった後、一冊のノートを差し出して休んでた時の分だと私の手に持たせた。


「あ、ありがとう!すごく助かるよ」
「・・・俺がどんだけ名字に世話なってる思てんねん。こんな時くらい役に立たんとな」
「はは、そっか。でも本当にありがとう」
「おう」


少し照れくさそうにした南君は、惚れた欲目じゃないけど、前よりもっと魅力的だと思えた。




放課後、家に帰った私は南君に何かお礼をしたいと思いお菓子を作ることにした。前のバレンタインの時、確か甘いものが好きだって言ってたから迷惑ではないと思うんだけど・・・。


「マドレーヌに、しよう」


美味しいし簡単に作れるからちょうどいいよね、と早速作り始めた私は段々と楽しくなってついついたくさん焼き上げてしまった。
岸本君にもあげようなんて考えながら、それを簡単に包んで部活終わりに間に合うよう学校へ向かった。



「差し入れとかやめてもらえます?迷惑なんで」
「・・・え?」


体育館近くのベンチに座って南君が出てくるのを待ってた私の前に、いつの間にか女の子が立っていた。
驚いて何も言えない私に痺れを切らしたのか、私が持っていた紙袋を指差して「それ、バスケ部の誰かにとちゃうんですか」と嫌悪感を隠しもせずにそう言った。

(バスケ部に差し入れするのって、ダメなのかな・・・)


「こないな時間に何しとんや名字」
「・・・南、君」


どう返そうかと私が考えあぐねていると、待っていた南君がすぐ近くに来てくれた。


「南先輩の知り合いなんですか」
「そうやけど・・・名字に用か?」
「別に・・・ただ、また差し入れ持ってきたミーハーな人かと思って、注意してたんです」


それを聞いた南君の目がスッと細まって、彼女に「そら勘違いやで」と訂正してくれた。


「失礼な事言ってすいませんでした」


訳が分からないまま見ているしかなかった私は、こちらに向かって頭を下げる彼女に慌てて「ごめんね、私がややこしい事したから」と頭をあげさせた。

彼女が去るのを見届けてから帰り道を並んで歩く。私はため息をつく南君にもごめんねと謝る。



「名字は何もしてへんやろ?」
「でも、差し入れを持って南君を待ってたのは本当だし・・・というか、お礼のつもりなんだけど」
「あれはマネージャーが早とちりしただけや。最近差し入れしたい言うてしつこいヤツらが多いねん。練習中も煩くしたりとかな」
「そう、なんだ?」


改めてバスケ部の人気を知ると同時に、そういう人たちに困ってるからあのマネージャーの子も怒ってたんだなと一人で納得した。


「・・・お礼って?」


首を傾げる彼に、私は持っていた小さな紙袋を渡した。


「マドレーヌなんだけどね。ノートのお礼にと思って・・・」
「なんか、悪いなあ」


ありがとう、と受け取ってくれた南君に不味くはないと思うと補足すると、「楽しみやわ」と言い口角を上げて笑っていた。



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