南くんのとなり | ナノ
夏への切符
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蝉が鳴いてジリジリと暑い日が続くこの頃。豊玉高校は終業式を迎えていた。
相変わらずお話が大好きな校長先生に至る所から舌打ちが聞こえたような気がした。

(実はうちの高校、ちょっと柄の悪い人が多かったりするんだよね・・・良い学校なんだけど)



「あの校長はホンマくどいな」
「そうだね」
「・・・お前の顔くらいな」
「なんやと南ィ!」
「まあまあ、」


午前中で学校が終わって、同じ帰り道の南君と彼の家に行くという岸本君の三人で歩いていた。

ボソリと言った南君に、関西人よろしく模範的なツッコミと怒りの表情を見せる岸本君。もう見慣れてしまったその光景を私は笑いながら見ているだけだった。


「そういえば、もうすぐだね、インターハイ」


あと二週間もせずに始まるインターハイ、確か8月に入ってすぐだと聞いていた。そして、大阪1位の豊玉と2位の大栄が出場することも。


「今年はどこで試合があるの?」
「たしか和歌山や」
「へえ?じゃあ近いんだね」
「観に来たらええやん。な、南」
「あほ、名字にも都合があるやろ」


岸本君が名案とでも言うように試合に誘ってくれた。和歌山だと本当に近いし、観に行きたいのは山々なんだけど・・・


「実は毎年、神奈川に行っちゃうんだよね」
「・・・そういや去年もやったな」
「なんで神奈川?」


去年もらった月餅めっちゃ美味かった、と微笑む南君。また買ってくるねと私が言うととても嬉しそうな顔をしておおきにともう一度笑った。
それを見てキュンと胸が高鳴る。


「私、中学二年まで神奈川に住んでたんだ。向こうにお父さんの実家があってね」
「ほーん・・・せやから標準語なんか」
「そのくだりは俺が去年やったから」
「ふふ、そうだったね」


本当に今更な岸本君の疑問に南君と二人して顔を見合わせる。確かにそんな会話もしたっけな、と一年前を思い出した。今こうやって一緒に並んで帰るくらい仲良くなれるなんて、あの頃には想像もつかなかった。



「和歌山には行けないけど、応援してるよ」
「当たり前や」


ニッと笑う岸本君が私の頭を乱暴に撫でる。ちょっと痛いけど、彼なりの照れ隠しだと分かっていたので何も言わなかった。


「じゃあな、名字」
「俺にもお土産頼むで!」


先に私の家に着き、門の前で二人に手を振った。ブンブンと手を振る岸本君に苦笑していると、こちらを見る南君と視線があった。
私から逸らす事ができないでいると、南君はスッと目を細めて、それから背を向けて歩いて行った。



「しばらく会えないのか、」


これからの夏休みが楽しみな反面、しばらく彼に会えないと思うと、なんだか複雑な気持ちになった。


(とはいえ、インターハイ頑張ってね、二人とも)


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