南くんのとなり | ナノ
岸本くんの心うち
( 25/78 )


たまたま朝練がいつもより早く終わって、トロトロ着替える南を置いて先に更衣室を出た。
すぐそこに教室が見えたとき、廊下の端に名字と知らない男子が居るのが分かって、俺はなんとなく足音を消して物陰に隠れた。
(・・・俺、何してんねん)

自分の行動を疑問に思うが、そうさせるような雰囲気がそこにはあった。そう、例えば、告白中のような・・・。


「俺、去年から名字のこと、気になってたんやけど」

(やっぱ告白かいな)


自分の方からは名字の顔しか見えないが、男子生徒の耳が真っ赤になってるのがわかった。
青春の1ページってか、と年寄りじみた事を考えていると「ごめんなさい」という一言が聞こえてきた。あれが名字の答えというわけだ。


「そないなとこで何やっとんや岸本」
「シッ!」


真後ろから聞こえた声に振り向いた俺は、そこにいた南の口をバッと手で塞いだ。


「んんんんんっ、(何すんねんっ)」
「ええから黙れって」


そう言ってコイツの顔をさっきまで俺が見てた方に向けた。直ぐに手も離す。
一瞬目を丸くして、「名字?」と呟く南に「告白現場や」と教える。


「・・・あいつ、吉田か」
「知ってるんか」


聞くと、名字と南の元クラスメートらしい。告白の返事を聞いて去っていくその背中を眺めながら、ご愁傷様と心の中で唱えた。

気付けば登校してきた生徒も多く、もうすぐで予鈴が鳴るところだった。俺と南もさっさと教室に入って席に着く。

南がチラリと見ている方を俺も向くと、席についた名字がいて。両手で頬杖をついてどこか上の空状態だった。
その頬は心なしか少し赤く色付いていて。さっきの告白でも思い出してるのだろうか。


「・・・かわええ奴」


名字に惚れた吉田という男子の気持ちが、分からなくもないと思った。


(・・・岸本君、どうしてニヤニヤしてるの?)
(そらあ名字がモテてるんやと思ったらな)
(なっ!見て、たの?)
(甘酸っぱい告白やったわ)
(う・・・意地悪だ)



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