南くんのとなり | ナノ
思い通りには
( 24/78 )


今年も同じクラスになれたんだから、まさか席が隣なんてそんなことある筈がないだろうな。そう考えつつも心のどこかで期待してる自分がいたんだけど・・・


「さすがに、それは無いよね」


案の定というか、南君とは近くも遠くもない微妙に離れた席になった。彼の方を眺めると、その近くの席になった女の子たちがきゃっきゃと楽しそうなのが見えた。多分、南君のことで盛り上がってるんだろうな。

私が羨ましげに見ていると、その手前にいる岸本君がこちらに手を振っていた。

「ふふ、」


ニッと笑う彼に私も手を振りかえした所で、授業が始まる鐘が鳴った。




「名前〜学食行こ」
「うん。わざわざごめんね、迎えに来てくれて」
「ええよ。通り道やし」


昼休みになって仲のいい友人と学食に向かう。彼女とは残念ながら違うクラスになってしまったので、お昼はどちらかの教室か学食で食べるようになった。クラスが離れてもこうして一緒にいられる友達がいて、私って幸せだなと思う。


「あの担任のことやから、すぐに席替えあったんやろ?」
「その通り」


彼女も少し前まではその担任のクラスだったから、大体のことは聞かなくても分かるみたいで。南君と近くになれなかったと話したら、「こればっかりは運やからなぁ」と苦笑していた。
それに頷きながら、ちょうど見つけた空いてる席に座る。




「そうだ、あのさ、前に弟君と南君が同じバスケ部だったって言ってたじゃない?」


ふと思いたって聞いてみた。確か同じ学校の先輩後輩だったとか。以前、球技大会の時に彼女から聞いたのを思い出した。
そうやで、と言って学食で買った日替わり定食を頬張る友人。ちなみに私はオムライスを頼んだ。


「岸本君も知ってる?」
「ん・・・ちょっと待って」


彼女はゴクリとおかずを飲み込んでから、口を開く。急ぐ話でもないのでゆっくり待った。



「岸本・・・岸本・・・おったような」
「覚えてない?」


うーん、と唸る彼女の様子からどうやら覚えてないみたいだった。まあ、弟君のバスケ部は強豪校で部員も多かったみたいだから仕方ないんだけど。ましてや、学年も違うし。


「その岸本がどうしたん?」
「ちょっと前に仲良くなったんだけど、同じクラスでね。南君と幼馴染らしいの」
「ほんでバスケ部ってわけか。知らんなぁ」


食べ終えた後のお膳を片付けながら、二人並んで学食を出た。


「岸本君もバスケ上手いらしいよ」
「ふーん?」
「今度紹介するね」
「うち、バスケ部あんま興味ないって」
「え、そうだっけ?」
「そうやの」
「かっこいいのになー」


一緒に応援しようよ?と笑顔付きで言うと、それ以上にニッコリとした満面の笑みで「・・・気が向いたら」と話をそらされた。
つれない彼女だけどけっきょく最後は私に付き合ってくれるんだから、本当に私にはもったいないくらいの親友だなと、クスクス笑ってしまった。

ある日の穏やかなお昼の時間だった。


PREVNEXT


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -