南くんのとなり | ナノ
南くんと岸本くん
( 23/78 )


二年生になるのだから遅刻はもうしない!そう意気込んで昨日は早くに寝た。そのおかげで寝坊もせずに早めに学校に着くことが出来た。
・・・のだけど、


「もう、こんなにいるんだ」


それでもすでに人で混み合っていたクラス分けの掲示板。なんとか自分の名前だけ見つけると、人に酔う前にさっさと新しい教室に向かった。
(三組ねえ・・・)

ガラリとドアを開けて教室に入ると、黒板には大きな文字で自由着席と書いてあった。ちらほらといる人の中に知り合いはいなくて、少し不安に思いながら窓際の席に座った。




「・・・名字?」


不意に隣から声をかけられる。
その低い声に一瞬ドキッとしてすぐにそちらを向くけど、期待した彼の姿ではなかった。


「え、岸本君?」
「なんや久しぶりやん。同じクラスなんか」


実は去年、保健委員だった私が当番の時に保健室に来たのが岸本君で。
彼の怪我の手当てを終える頃にはその気さくな性格のおかげですっかり意気投合して、廊下ですれ違えば挨拶するくらいには仲が良かった。

「岸本!お前先行くんやったら言えや・・・あ、名字」
「お前が遅いからや」
「み、南君?」

(・・・同じ、クラス?)


教室の入り口からまっすぐ歩いてくる南君。そのまま私の後ろの席に座った。隣には岸本君がいて、なんだか背の高い二人に囲まれて少し窮屈な気持ちになった。でも、それもすぐに後ろの南君の存在を考えるとドキドキに変わった。

(まさか、また一緒クラスになれるなんて・・・神様ありがとう!)


「で、なんで岸本と名字が仲良さげなんか分からんねんけど」


ポツリと呟かれたそれに岸本君が、「俺と名字は苦楽をともにした仲やねん」と私に笑いかけた。

(苦楽って・・・)

怪我の手当てしてあげただけなんだけど、なんて言えない私は曖昧に頷く。「あっそ」と一言で返す南君は岸本君には随分淡白なようで、聞けば二人は小学校からの幼馴染らしかった。部活も、同じバスケ部だとか。
(そう言えば前に南君の口から岸本君の名前を聞いたような・・・)


「なんでお前は名字に馴れ馴れしいねん」
「そらあな?」
「ね」

頬杖をついて私に目配せする彼にドキドキしつつ、なんとか平静を装う。


「同じクラスだったからだよ」
「お前より仲ええんやで」


どうやと言わんばかりの南君と、先ほどの南君と同じように「あっそ」と拗ねた表情をする岸本君。
そのお互いの姿があまりにも似ていて小さく笑う。


「どうかしたんか名字?」
「岸本の顔のせいやろ」
「なんやとコラァ!」


まあまあ、と宥めて二人を交互に見る。


「二人が似た者同士で笑っちゃった」


私がそう言うと、恥ずかしくなったのかどちらも顔を少し赤くしてそれぞれ違う方向に顔を向けていた。その仕草が可愛くて、担任の先生が来るまで私の頬は緩みっぱなしだった。





「俺が新しい担任や!よろしくなー。じゃ、まず席替えするかー!」
「またあいつか」
「・・・みたいだね」


去年に引き続き同じクラスになったのは、南君だけじゃなくて担任の先生もだった。


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