南くんのとなり | ナノ
観察してみる
( 22/78 )


「はよ、名字」
「お、おはよう」


朝、教室の入り口で南君と会って、挨拶をした。少し眠たそうだったから、夜更かしでもしてたのかな。寝癖で跳ねた髪が可愛いと思った。




「おーい南!また寝とんかー?」
「・・・すー」
「グッスリやな」


南君は最初の授業でもう熟睡していた。このクラスでは既に見慣れた光景だったけど、彼の英語の成績が心配でならない。




「南!辞書貸してくれへんか」
「なん、忘れたんか。ええけど、はい」

「南、昨日の野球見たか?阪神の逆転勝ち!」
「部活やったっちゅーねん」

「南〜課題終わった?」
「他当たってくれ」


他のクラスの人も部活の友達も、南君の元には人がよく集まる。南君の人気は女の子だけじゃないみたい。




お昼を食べ終えて午後の授業が始まると、5分も経たない内に南君は眠たそうな顔をしている。そのまま眺めていると、パチリと視線が合った。

(・・・口パクでなにか言ってる?)


つ、ぎ、あ、られ、で。流石に意味が分からなくて首を傾げていると、南君がふいに前に向き直った。私も顔を戻すと、今度は先生とバッチリ目が合う。


「名字、次のとこ読もか」
「は・・・はい」


どこまで進んだんだっけ、と慌てて教科書を捲った。なるほど、さっきのは「次、当てられんで」だ。なんとか本文を読み終わってからは、真面目に授業を受けることにした。




「で、一日観察してみてどうやったん?」
「んー・・・」

放課後になり人も疎らになった教室で、友人と二人。今日は部活がないという彼女と一緒に課題を片付けていた。


「南君は皆の人気者」


その一言に尽きる。彼の性格は決してクラスのリーダータイプではないし、とっても愛想がいいとかでも無いんだけど、不思議と人が集まっていて。


「それは前から分かってたやん。新しい発見とかあるやろ?なんか」
「・・・また背が伸びた。ついでに髪も」


確かにそうかも、と恐らく南君を思い浮かべてる友人。彼女が書いた英単語のスペルが間違っていたのでそっと直してあげた。


「もうこのクラスも終わりやから、寂しいんちゃう?」
「そう。それなんだよね」


一年が経つのは本当にあっという間で、とりわけ南君を意識してからは驚くほどに時間が早く感じられた。そしてあと何日かすれば春休みになって、私たちは二年生に進級する予定だ。
つまり、新しい学年になれば当然クラスも新しくなる訳で。生徒数の多い豊玉で来年も同じクラスになるのは、難しい。もちろん、無いわけじゃないとは思うんだけど・・・。

(こればっかりは、仕方ないよね)


むしろ今までが恵まれすぎていたのだと思うことにして、とりあえず今は目の前の宿題に取りかかることにした。



「来年も南と同じクラスやとええな」
「なれるかなー」
「うちも名前と同じがええけど」
「もちろん!」



PREVNEXT


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -