南くんのとなり | ナノ
気付いたのは
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先日、予想通り行われた席替えで私は廊下側の席になった。仲のいい友人とは正反対の位置で、あまり良いとは思えなかった。

(なにより、廊下側は寒いのが辛いよね)


南君とも初めて遠い席になった。彼の方をちらりと見ると、教室のど真ん中の席でどこか窮屈そうにしている。
入学してからずっと近くにいた存在が急に離れてしまって、私の中で小さな違和感を残すのだった。





運悪く日直と教室の掃除当番が被ってしまって、下校時間になっても帰れないでいた。もう一人の日直の子は家の用事があるとかで授業が終わるや否やさっさと帰宅してしまっていたから、なおさら時間がかかる。


「誰かに代わってもらうとかして欲しいよね」


笑顔で送り出した自分が悪いのかと、書き終えた日誌を抱えながら一人薄暗い廊下を歩く。



「あ、あれ・・・南君?」


玄関を出て門に向かっていると、その間にある体育館の入り口らへんに男の子が立っていた。見知った顔だったので声をかけようと一歩踏み出した。のだけど、


「先輩・・・話って何なんすか」
「あんな、」


(あれ?南君、誰かと話してる?)


「前から好きやってん・・・よかったら、ウチと付き合ってくれへん?」
「・・・」


「・・・っ!」


遠くからは見えなかったけど、近づくと南君の影にもう一人いるのが分かった。それに、聞こえてしまったのは、告白の言葉。
私は慌てて来た道を引き返して、物影に隠れた。見てはいけない場面を見てしまって心臓がどくどくと早鐘を打っている。

(ビックリ、した)


なんとか落ち着こうと静かに息をする。聞いてはいけないと思いつつも、南君が何て答えるのか気になって仕方がなかった。


「俺、今は付き合うとか考えられへんので・・・」
「無理ってこと、やんな」
「はい」
「・・・そっか」


その女の人は、よく見ると美人で有名な男子バスケ部マネージャーの先輩だった。南君の話し方を見る限り、間違ってはないと思う。遠目から見ても分かるスラリと伸びた手足に抜群のスタイル、色白さなんかで、人気があるのも頷ける・・・そんな人だった。


「引き止めてごめんな。聞いてくれてありがとう」
「・・・っす」
「うちらの代が引退したら、言おうて思っててん。卒業前に・・・言えて、スッキリ、したわ」


(南君・・・あんなキレイな人の告白、断っちゃうんだ)


振られた先輩が泣くのを我慢しているのがこの距離からでも感じられて、なぜか私も胸が苦しくなった。それと同時に、どこかホッとしている自分に気付く。
そう言えば前にも同じ様な事があったかもしれないと冬休み前の事を思い出した。確か、クラスの女の子が南君に英語を教えていた時だ。

(私・・・南君の、こと・・・)



もう一度二人がいた方を見ると、すでにその姿は無くて。ずいぶん考え込んで居たんだな、と深いため息をついた。いつまでもしゃがみこんでる訳にはいかないので、何とか立ち上がって、歩き出す。

家までの帰り道中、ずっと考えていたのは南君のことで。


(・・・私も南君のことが好きなんだ)


一度そう認めてしまうと、途端にスッと胸が楽になった気がした。
それと同時に、次に会った時どうやって話せばいいんだろうなんて少し不安が過るけど、そういえば、と席替えをしたことを思い出す。

遠い席に残念がっていたけど、むしろ離れて良かったのかもしれないなと複雑な気持ちになった。



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