南くんと冬の朝
( 18/78 )
冬休みになってもクリスマスになっても、特別に何かするということはなくて(友達はみんな部活や予定が入っていた)。少しの寂しさを覚えながらも、ちまちまと宿題を片付けつつ部屋の掃除をするくらいだった。
新年を迎えてからは、友人と一緒に初詣に行ったりして楽しんだのだけど。
やはりあっという間に冬休みも終わり、そろそろ本格的に寒くなってきた朝の道を学校に向かってゆっくりと歩く。
「うー・・・寒ーい」
マフラーを鼻の高さまで上げて、両ポケットにはカイロを忍ばせていた。それでも寒いのが苦手な私はこの時期になると途端に動きが遅くなるのだった。
(暑いのも寒いのもやだ!)
チリンチリン
一際冷たい風が吹いて堪らず立ち止まっていたら、すぐ後ろから自転車のベルの音がした。邪魔になっているのだと思って道の端に寄っても、追い越される事はなくて。おかしいと思い振り返る。
「久しぶり、名字」
そこには私と同じようにマフラーを鼻の高さまで上げた南君がいた。南君も寒がりなのかな。
よっ、と片手を上げると自転車を降りて手で押しながら私の横に並んだ。
「おはよう。流石に新学期の初日に朝練はないんだね?」
「おん。今日は放課後もないけどな」
「そうなんだ」
予鈴まで時間があったから、私たちは話しながら廊下をゆっくり歩いた。
「そういえば、年末はどうだった?」
「ああ・・・冬の選抜な」
冬休みになる少し前、家まで送ってもらった時に、冬の選抜があると教えてもらっていた。三年生の最後の大会だと。
「残念ながら2回戦負けやったわ」
はー、と白い息を吐きながら言う南君。見たところ悔しそうな感じでは無かったから、もう新チームに向けて切り替えてるのかもしれない。
マッチアップをした相手の三年生の大きさに驚いたとか、どこそこの監督は絶対にカツラやで、なんて他愛ない事を教えてもらいそれに笑っているうちに気がつけば教室に着いていた。
少しして予鈴が鳴り、担任の先生が教卓に立った。相変わらずニコニコとして元気な先生だなと思う。
「お、欠席者ゼロやなー。感心感心」
挨拶をして出欠を取り終わると、体育館に移動して始業式が行われた。校長先生のつまらない話を聞き流しながら、これが終わればまた席替えをするのだろうかと考える。
友人と南君に挟まれた今の席はとても居心地が良かったのでそれが変わってしまうことをひどく残念に思いながら、やっと話を終えた校長先生が壇上から降りていくのを遠くに見ていた。