南くんのとなり | ナノ
南くんと体育祭
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「位置について・・・よーい、」

パンッ!



「なんでこのあっつい中走り回らなあかんねん」とは、南君の言葉。
たしかに、じりじりと照りつける日差しに頭を溶かされてるんじゃないか、なんて思うけど。

そう言いながらも真剣に、というよりも負けず嫌いなのか第一走者の南君は颯爽とグラウンドを走っていた。それを私はちゃっかり日陰の応援席から見ているところ。しかし速いな。


今日は体育祭。運動が出来る人にとってそれは見せ場であると同時に、得意でない人にとってはただ拷問に近い行事である。ちなみに私は体育大会が嫌いなわけじゃない。

(暑いのは、苦手だけど)



リレーやら走る種目なんかはやっぱり足の速い人が優先的に。ただ変わってるのかウチのクラスはそれ以外は適当にクジで決めた。
だから人によって種目にでる回数も違ってくるんだけど、不思議と誰も異議が無いように丸く決まったものだった。


今はリレーの最中で、ちょうどアンカーがゴールしたところ。もちろんうちのクラスが余裕の1着でゴールテープを切っていた。
クラス対抗の中で優々と一位を勝ち取った彼だけど、他の走者とハイタッチした後は、うっとうしそうに額の汗をぬぐうとそのまま真っすぐクラスの応援席に戻ってきた。
ちょうど人がまばらで席は他にも空いていたけど、「疲れた」と言って座ったのは私の隣。
少し驚いたけど顔には出さないように平然を装う。たまたまだと、思う。



太陽の光に反射する汗をみて、手に持っていた水筒を手渡すと「サンキュ」と言って受け取ってくれた。


「南君、おつかれさま。一着おめでとう」
「おん。うちのクラス足速いヤツばっかやったし、余裕やったわ」


ははっ、と小さく笑う南君。
そうは言ってもあんなに差が開いたのは、彼のスタートが良かったからだというのは誰が見ても事実だ。
私は改めてバスケ部のエースのすごさを知った気がする。



(あの人格好よくない?)
(1年の南君でしょ!?バスケ部のエースらしいよ)


気のせいかさっきのリレーから、南君への視線が他学年でも増えたように思えた。



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