南くんのとなり | ナノ
後ろの席は
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まだまだ暑さは残ったまま、気がつけばとっくに新学期になっていた。
一日の授業をほとんど終えて、5限が終わるまであと10分。チャイムが鳴れば今日はもう家に帰るだけだ。



「名字、背中に糸ついてるで」
「え、ほんと?」
「ほんま。とるで・・・ん、ええよ」
「ありがとう南くん」
「かまへん」


後ろの席の南君にお礼を言って、ポケットに入ってたレモン味の飴玉をこっそりと彼の机に置いた。
私のお気に入りの味だったりする。


「これ、あげる。レモン好き?」
「好きやで」


ありがとうな、と言って早速包みをあけて食べる南君。ほっぺが膨らんでなんだかちょっと可愛かった。

どうして南君が後ろにいるかというと、学期始めに席替えがあったからで。せっかく仲良くなったのに離れるのはちょっと寂しいな・・・なんて思ってたらなんと今度は前後の席になった。窓際一番後ろだから、前とあまり変わらない気もするけれど。

ちなみに運がいいのか私の前の席は友人になったので、嬉しさも一入だった。



不意にトントンと私の肩が叩かれる。それと同時に、授業終わりのチャイムが鳴った。委員長の声に合わせて起立して、軽く礼をしてから後ろを振り返る。


「名字、悪いんやけどな」
「うん?」
「今日の英語のノート見せて」
「あはは」


相変わらず彼は苦手な教科では寝てしまっているらしい。隣の席じゃなくなったのでもうその姿は見れないけど、想像に難しくなくて少し笑ってしまった。

「明日返してくれたらいいよ」と添えてノートを渡すと「助かるわ。おおきに」と言って受け取り、彼は今日も部活に向かった。



席が変わっても、前と変わらない彼とのやり取りがちょっと特別なものに思えて、私は口角が上がるのが分かった。



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