南くんのとなり | ナノ
期末試験
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とうとう来た。学生の本分ともいえるあのイベント。それは決して体育祭や文化祭とかいった生ぬるいものなんかではない。


「お前ら期末近いんやからなーちゃんと勉強せえよー」


そう言った担任に、クラスの皆は口々に不満の色を漏らすのだった。



じわりじわりと夏の暑さが近づいてくる中、わが校豊玉は期末テスト1週間前になりました。普段から勉学に勤しんでいる者であればそれほど焦る必要はなし。逆に毎日部活だのなんだのでさぼっていた人たちは頑張らないといけない。


「テストなんて・・・燃えればいいのに・・・」
「なんや物騒やな、名字」


数学の教科書を睨みながら言った独り言にはしっかりと返事が返ってきた。それはもちろん隣にいる南君からなんだけど。

ちらりと視線をやると、頬杖をつきながらこちらを見ている彼。入学当初よりも日に焼けた肌がとても健康的で、それでいて随分とたくましくなったように見える。


「そのくらい嫌いだってことだよ。南君はテスト余裕なの?」
「そう見えるん?」
「あー・・・」
「そこは見えるって言っとき」
「南君、ずっと寝てるからさ」
「否定はせんけど・・・ま、余裕がないんは確かやしな」


毎授業いっそ潔いくらいに寝てしまう彼を隣でみていると、とても余裕そうには思えなかった。苦手な科目を指折り数える彼からは焦った様子は見えないのだけど。「特に英語がアカンねん」と言って笑っていた。


「英語、だめなの?」
「からっきしやわ。他はまあ、なんとかなるとは思うんやけど」
「じゃあ赤点はないね」
「あーどうやろな、相当やからな・・・」


うーん、と唸る南君の横顔を私は笑いながら見つめる。唇をつきだした彼がなんだかちょっと可愛いと思ってしまった。


「そういえば南君、理数系は得意なんだよね?」
「得意っていうんか?・・・まあ、文系よかは」
「いいよね、私は数学できないから」
「せやった?」


不意にこちらを向いた南君に私は乾いた笑みをこぼす。頷いてみせると彼は楽しそうに笑った。


「ほな話は早いで。数学教えたるわ」
「ほんと?」


それは私にはとっても有り難いお話で。苦手な数学がなんとかなるし、それに、南君と勉強出来るのは純粋に楽しそうだと思った。


「ありがとう!私も、英語なら教えられるから」
「そら助かるわ」


「よろしくな」と言ってニヤリと笑う南君につられて、私も知らずに微笑んでいた。



テスト前の3日間は流石のバスケ部も活動はお休みらしく、毎日放課後の教室で勉強することになった。
その成果か、私は数学で平均点をとることが出来たし、南君は英語で赤点をとることは無かった。その事に彼は相当驚いていた。どうやら中学でも散々な成績だったらしい。

テスト期間があけると、いよいよ学校は夏休みモードで。私は友人たちと予定を立てつつ、毎日部活だと言う南君に合掌しておいた。


入学してからの3ヶ月ちょっとは、あっという間に過ぎ去っていった。



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