年下の女の子 | ナノ
たいしょう!

毎月、月末になるとうちの店にやってくる常連の家族がいて、楽しそうに料理を食べていく。外が暗くなり始めて今日もそろそろ来るだろうと何となく入り口を見ていると、小さな女の子がそっとドアをあけて中を覗いていた。
ちっこい体に溢れそうな大きな目をこちらに向けていて、その様子を眺めていた俺と目が合った。


「たいしょう!」


途端に、にぱーっと満面の笑みを浮かべて店内に入ってくる。いつものお気に入りフレーズを言いながら。
(この子は料理よりこの言葉の方が好きみたいだ)


「へい、いらっしゃい」


俺はまだ見習いだが、この少女だけは俺を大将と呼ぶ(親父のことはオジサン呼びなのに)。初めて俺をそう呼んだ時はこいつの両親やら親父、もちろん俺も苦笑したものだった。


「こんばんは」

「こら名前、大人しく座りなさい」

「はーい」


後から入ってきた両親は、俺の足元できゃっきゃとはしゃぐ名前をいつものカウンター席に座らせた。
ちゃんと言うことを聞きつつも、チラチラと俺の方に視線をやってくる。何が気に入られたのか分からないが、とにかく名前は俺がお気に入りのようで、事あるごとに「たいしょう!」と俺に話しかけてくるのだ。これまで人には(特にこんな子供には)怖がられることはあっても懐かれる事は無かったからか、こちらとしてもこんな風に笑いかけられて悪い気はさらさらしなかった。


「またね!たいしょう!」

「おう。気をつけてな」


食事を終えた家族がそろそろ帰ろうかという頃、毎度おなじみのように俺のところへ来て挨拶をする名前。はじめこそ「娘がすいません」と引き止めていた彼女の両親も、今となってはうちの親父と同じように笑いながら見ている始末だ。


「がんばってね!またくるね!」


最近では俺が見習いだということをちゃんと分かってるのか、「がんばって」や「たいしょうのお料理早く食べたい」と生意気な事も言ってくる。その度に俺は明日からも板前の修行に精をだそうと思えた。こいつがもう少し大きくなった時にうまいものを食わしてやれるように、修行あるのみだ。



「わたし、たいしょう大すき!」



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