猫に好かれたい | ナノ
◇ 猫に好かれたい 08
( 8/15 )


あるお休みの日、朝から出かけて夕方帰るとき
急な雨が降ってきて帰り道の途中にある古いビルの軒下で雨宿りをしていた。

折り畳み傘なんて用意してないし、仕方ないからこのまま時間が過ぎるのを待つことにした。


「あ〜あ……」


この様子じゃしばらく動けないかもなぁ。
なんて空を見上げてながら考えていると、少し遠くから学ランの男の子が歩いているのを見つけた。顔こそ見えないけど、遠目でも分かる長身と、肩にかかるバスケの荷物。いつもの自転車じゃ無く、傘を差してぼうっと歩く彼は部活帰りだろうか。

ザア、と強い風が吹いて、足元が雨で濡れる。慌てて軒下の奥に引っ込むと、ちょうどこちらを見ていた楓くんと目が合った。無視するのもおかしいし、ってことで軽く手を振ると、何故か彼はその長い足をこっちに向けた。ツカツカと歩幅の広いこと。


「……部活の帰り?」


近くに来ると、なんだかまた迫力が増している気がした。背も前より伸びてそうだ。さすが成長期、とそんなことを考えてるうちにグイッと手を引かれて、気が付けば楓くんの傘の中にいた。私が「あ」とか「え」とか言ってる間に降り頻る雨の中に飛び出した。


「……濡れちゃうよ?」
「これくらい……べつにいい」
「そっか。いつもありがとう」
「どうせ……同じ帰り道、だから」


少し大きめの傘も二人で入ると窮屈で、お互いの肩が濡れていた。楓くんはそれ以上は何も言わず、ただ眠たそうに目を細めながら帰り道を進む。ゆっくりと、私の歩幅に合わせてくれるところが優しいなぁと笑った。





「楓くん、傘忘れちゃったの?」


そう言って昔、楓くんを家まで送り届けたことがある。小学校の時だったかなぁと記憶を辿るけど、時期は曖昧で思い出せなかった。あの時傘を持ってたのは私だったから今とは逆だけど。なんだか懐かしくて嬉しくなった。

楓くんは覚えているのだろうか。


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