猫に好かれたい | ナノ
◇ 猫に好かれたい 02
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「あっ、」


ボールが弾むような音がしてふと顔を上げると、よく通りかかる公園に知ってる子がいた。つい最近話題に上っていた幼馴染とこんなに簡単に会ってしまうなんて、となんだか変な気持ちになる。

それにしても、本当に久しぶりに彼の姿を見たが、そのあまりの成長ぶりには驚くばかり。大きくなりすぎだ。昔の小さくて可愛かった「楓くん」の面影はもう何処にもなかった。


ガシャン…!


設置されているリングが軋んだ音で我に返った。すごいすごい!ダンクなんて初めて見ちゃった。やっぱり楓くんはすごい子だな。


「……さぁ、帰りますか」


それからというもの、少し帰りが遅くなったりするとあの公園で楓くんを見かけることが増えた。見かけるとついつい足を止め、そのプレイに釘付けになってしまう。

きっと部活でも目一杯練習してるだろうに、足らずに自主練までするなんて偉いよ少年。君は将来大物になる!……とかなんとか、フェンス越しにニヤニヤと微笑む私は誰の目から見ても不審者そのものだ。



「声を掛けたらいいじゃない」
「えー、……だってもうずっと話してないし。そもそも楓くん私のこと覚えてるのかなぁ?」
「忘れてるってことはないでしょう」


だといいけど、と苦笑するしかない私。

母からすればどうやら楓くんは今でも変わらずご近所の可愛い男の子らしい。いやあの見た目じゃもう可愛いとは言えないけどね。


「昔はあんなにくっ付いてたんだから」
「……昔は、ね」


たしかに私たちは世間一般でいうところの幼馴染ではある。だけど、バスケをしている時の彼の真剣な顔を見ていると、なぜかその存在がとても遠くに感じられるのだった。


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