◇ 猫に好かれたい
01 ◇
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「さっき流川さんに会って聞いたんだけど…」
リビングのソファでゴロゴロしながらアイスを食べていた私は、母の口から聞こえた「流川」という名前に思わず体を起こした。流川さんと聞いて当てはまるのは、近所に住む流川家の人たちだけだ。そう、つまり母の言う流川さんとは、私の幼馴染のお母様のことで。
「楓くん、今バスケ部のキャプテンなんだって」
「へえ……凄いねー」
「あの子ももう中学2年生なのよね。時が経つのは早いわぁ」
最近じゃあまり会うこともなくなった楓くん。久しぶりに彼の姿を思い浮かべて、少し懐かしく感じる。
それにしても、楓くんが今のバスケ部のキャプテンなんだ?まだ私が富中の3年だった頃、1年だった楓くんはすでに上手いとは言われていたけれど。でもあの子、昔から寡黙というか口下手というか……勘違いされてしまうことも多そうだし、チームを纏めるキャプテンに向いてるとは思えないような。
「……まあ、スポーツのことは私にはよくわかんないか」
どうせ私が考えたところで無駄なことだ。
現に楓くんがキャプテンをやっているというのなら、チームメイトや監督も納得の上なのだろうし。体育会系のその辺は所詮帰宅部の自分には遠い話だ。やめやめ、と頭の中を空っぽにする。
そうして手の中に残る溶けかけたアイスにパクリと食らいつき、残った木の棒をゴミ箱に向けて投げた。
「お、ナイッシュー」