猫に好かれたい | ナノ
◇ 猫に好かれたい 15
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 先日の県総体でその才能を余すことなく発揮していた楓くん。最近ではいろんな高校からバスケ推薦のお声がかかっているらしく、それならもう勉強の必要が無いんじゃ…?と楓くんママに言ったら、それとこれとはまた別だと続投をお願いされた。
 本人にも聞いたらこちらも首を横に振るだけで、そうこうしているうちにいつの間にやら夏休みも終わり、季節はすっかり秋になっていた。



「そういえば、高校はどこを考えてるの?」


 今日の家庭教師の時間が終わり、広げていた教材を片付けていたとき。ふと気になって聞いてみると、楓くんは「あー…」と呟いた後、まだ決まっていないと答えた。行き先によっては今後の勉強の質を考える必要があるし、出来れば早く分かった方が私も準備しやすいけれど……決まっていないものを急かせるわけもなく。


「うちに来れば、バスケの環境は整ってると思うよ?顧問の先生が力入れてるらしくて」
「陵南……そういえば、なんか誘われたような」
「えっ!そうなの!?」


 コクリと頷く楓くん。
 こうしてまた仲良くなれたわけだし同じ学校になれば嬉しいのに。けれど目の前の男の子は、あまり乗り気ではなさそうだった。



「……名前先輩」
「ん?」


 徒歩数分の距離にある我が家の玄関まで送りに来てくれた楓くんは、ちょい、と私の服の裾を掴んでいた。心なしか大きな彼の頭に垂れた耳が見える気がした。


「先輩と一緒の学校が嫌なわけじゃない……っす」
「……そっか。そう言ってもらえると嬉しい」
「もうちょっと考える」
「うん。また決まったら教えてね?応援してるから」
「……ウス」


 なんだか今日は楓くんがよく喋る。それにいつものクールな感じじゃなくて、なんだか甘えてくれているような、懐いてくれているような。

 満足げな表情で帰っていった楓くんを思い出して、私の口元がだらしなく緩む。いやぁ、野良猫に懐かれる気分ってこういう感じなのかな。


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