猫に好かれたい | ナノ
◇ 猫に好かれたい 09
( 9/15 )


「うわー……やっぱ人多い」


おめでたい年始のご挨拶。

地元で有名な神社までお参りに来たはいいものの、圧倒的な人の多さに気持ちは既に回れ右だった。


「名前、こっちこっち」


私を引っ張る友人に続いて参拝の列に並んだ。
家族連れや老夫婦、若いカップルで長蛇の列ができていて、自分たちの番がいつになるのやらと少し肩をすくめた。とはいえ途中で気になる出店を覗いたり、時折り周囲を見渡すなどしていると、思いのほか早く時間は過ぎていった。


「あ、ねえ見て見て……あの人かっこよくない?」


ポッと頬が染まっているのは寒さのせいかそれとも甘酒のせいか。そんなに顔を赤らめるほどのイケメンが?と、期待に胸を膨らませつつ、友人が必死で指差す方を向いてもそれらしき人が見当たらない。


「え……どこ?」
「ほらあそこ!!ちょっと色素薄い感じの、茶髪の!!」


そうは言われても、すぐには分からない。楓くんくらい背が高い人だったら直ぐに見つけられるのに。と、そう思った時。


「っ、うわぁ、ほんと……アイドルみたい」


視線の少し先に、本当に背が高い人を見つけて。その隣には友人が言った通りの茶髪がかった男の子がいた。


「あれこそ文句なしのイケメンだね」
「隣の人もかっこいいね?背高いし、眼鏡かけてなかったら……ちょっと楓くんと似てるかも」
「それって前に言ってた幼馴染?」
「そうそう」


新年早々いいものが見られたと二人で癒されながら、冷える指先にはぁ、と息を吹きかける。もうそろそろ自分たちの番になりそうなので、サッと小銭を用意した。

賽銭箱の前に立つと、先程の男の子が頭の中に浮かんだ。背が高いことと黒髪なのは同じだけど……やっぱり似てないかも、と考え直す。
楓くんはきっと、お正月だろうが誕生日だろうが、家で寝てるかバスケをしてるに違いない。その姿を想像するだけで、くすりと笑みが浮かんだ。

二礼二拍手をし、軽く目をつむる。周りの人達が誰も怪我とかしませんようにと、一年に一度しか拝まない神様に両手を合わせた。



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