嫌よ嫌よも | ナノ
みんなは知らない
( 5/12 )


「もう、お母さんめ……」


実家からたくさん野菜が送られてきたから、と神家へのおすそ分けにパシられた私。せっかくの休日にゴロゴロしていたというのに。

少し重たいビニール袋を手に、見慣れた玄関のインターホンを押す。いつもならだいたい宗のお母さんが出迎えてくれるけれど、扉を開けたのは眠そうに欠伸する宗一郎で。聞くと、今日は部活が休みらしい。両親とも朝から出かけていて一人で留守番をしているとの事だった。


「今まで寝てたの?もうお昼過ぎだけど」
「……ちょっと寝すぎたかな」
「へえ、珍しい」


俺もそう思う、なんて言ってまた欠伸をした宗一郎。学校じゃ見れないこんな気の抜けた姿を知っているというのも、幼馴染の特権かもしれない。まあ知ってたところで、って話だけど。

野菜を渡してもう用は無いし、帰るねと言って手を上げればまるで返事をするようにぐう、と鳴った腹の虫。もちろん私のじゃない。


「……お昼ご飯もまだ?」
「それどころか朝も食べてないや」
「スポーツマンなのに」
「そうだね」


そんなだから背は高くても線が細いんだよ、とは口にしなかった。言えばニッコリと黒い笑顔で頬をつねられるのがオチだ。触らぬ神に祟りなし、てことで今度こそ帰ろうとした私の腕をさっと掴んだ宗一郎。なんだか面倒くさい予感がしつつも彼を見上げる。


「名前、たしか料理部だったね」
「……うん」
「上達したんでしょ?」
「少しは」
「じゃあ、なんか作ってよ。俺お腹すいたんだけど」
「えー……急に言われても」
「頼むよ」


ぽん、と頭に乗せられる大きな手。宗一郎は、私がこうして頼られると断れないことを知っているからずるい。




「どうよこれ」
「おお、すごい」


出来上がったレモンケーキを、玄関先で得意げに見せる。結局、彼のお母さんがしっかり昼食も準備してくれていたので、それならと食後のおやつを注文されたのだった。一度家に帰って作ってきたこのケーキは、先日の部活で練習したばかりなのでかなりの自信作だ。


「一緒に食べるだろ?」


上がりなよ、と誘われるままリビングに通され、宗一郎よりも把握してる台所で飲み物の用意をする。言わずもがな、この家にはしょっちゅう出入りしているのでその辺は勝手知ったるなんとやら、だ。


「ケーキだからストレートでいいよね……って、もう食べてるし!」
「ん、美味いよ」


紅茶を乗せたトレーを慎重にテーブルへ置いた。私を待たずに、すでに何切れ目かのケーキを手で頬張っていた宗一郎。用意した取り皿やフォークは使われないまま。けっこう大胆というか、ガサツなところがあるんだよね。


「名前にしては上出来かな」
「……なんか偉そう」
「あ、紅茶ちょうだい」
「もう!!」


こうして今日もマイペースな幼馴染に振り回され、どっと疲れた休日だった。



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