嫌よ嫌よも | ナノ
君と私とほかの子と
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しまった。

次の授業の準備をしようとして教科書を忘れたことに気付き、どうしようかと考えをめぐらす。隣の人に頼んでもいいけど、次の科目の教師はちょっと厳しい人で、特に忘れ物に関してはうるさいのだ。

しょうがないから頼みやすい幼馴染に借りようと、少し離れたクラスまで足を運ぶ。教室の入り口から宗一郎の姿を見つけて、あまり目立たないように近付いた。


「……中学から変わんないね、名前は。忘れ物が多い」
「う……ごめんなさい」
「そう思うならしっかりしなよ」
「……ハイ」


呆れ顔をされてしまっても、宗一郎の言う通りなので何も反論はできなかった。でもまあ、口ではこう言いながらもちゃんと貸してくれるんだから、持つべきものは幼馴染だ。


「あの、神くん……ちょっといい?」


私が宗一郎と話していると、すぐ近くから声が掛けられた。「どうかした?」とクラスメートの女の子と話す宗一郎はそれはもう優しい表情だ。


「今度の委員会のことなんだけど」
「ああ、そうだったね」
「先生に確認したら……」


邪魔しては悪いので、二人が会話する横で黙って待機していた私。清楚で可愛い子だなぁ…なんて考えていると、途中チラリとこちらを見た女の子と目が合った。名前も知らない子だけど無視をするのもおかしいと思い、軽く会釈をする。


「ごめんね、間に入っちゃって。神くんと幼馴染……なんだっけ?えっと、名字さん?」
「あ、うん……そう、幼馴染だよ」
「……仲良いんだね」


そう呟いた彼女は既に宗一郎への用事を終えたのか、そのまま自分の席へと戻っていった。私のこと、知ってるんだ?


「はい名前」


パコ、と頭に乗せられた教科書を慌てて両手で掴むと、なぜか目を細めている宗一郎。


「何ぼけっとしてんの。もうチャイム鳴るよ?」
「……ありがと、すぐ返すから」
「もうその授業終わったし家に帰ってからでいいけど」
「ん、分かった」


軽く頷いて、それじゃあと踵を返す。

宗一郎は基本的に私に対して雑なところがある。もちろん困ってたら助けてくれるし、気を遣ってくれることもあるけど。だけど、さっきのクラスメートへの話し方や表情を見ていると、やっぱり他の女の子には接し方が柔らかいのが分かる。私を相手にするときとは全然違っていた。


「……幼馴染……かぁ」


幼い頃からお互いのことを知っているから今更かもしれないけれど、もう少し私にも優しく接してくれたらいいのにと思わなくもなかった。


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