高校生活のはじまりも君と
( 2/12 )
「名前、もう宗ちゃんたち待ってるわよ」
「わかってる!」
「いっつもギリギリなんだから!」
まだまだ着慣れない制服で、新しい鞄を持って、新しい革靴を履いて、ちょっぴり緊張しながら玄関のドアを開けると、目の前にいたのは母親ではなく呆れた顔の幼馴染だった。
「……髪、跳ねてるけど」
「え、うそ…!」
「そんなんじゃ彼氏も出来ないよ」
「よっ、余計なお世話です!」
開口一番、嫌なところをつついてくる宗一郎にムキになって言い返していると、隣でその様子を眺めていた宗一郎のお母さんがクスクスと笑いだした。
「あら、宗一郎ってば心にもないこと言っちゃって。本当に名前ちゃんに彼氏が出来たら困るくせに」
「ちょっと黙っててくれる?」
「えー、おばさん宗ちゃんが名前を貰ってくれるって期待してるのに!」
「……お母さんも黙って」
昔から、この母親たちは私と宗一郎をどうにかしてくっ付けようと企んでいるようで、なにかと要らぬ世話を焼いてくる。おかげで私たちはお互いに少し捻くれて育ってしまった。
まあ、本当に兄妹のように育ったんだから今さら嫌いにはならないけどさ。私たちに限って結婚とか付き合うとか、そんなのあるわけ……
「俺だって相手を選ぶくらいの権利はあるよ」
「私だって宗一郎が彼氏は嫌だもん」
「……言ってくれるね」
「そっちこそ!」
うん。やっぱりどう転んでもナイよね。
母親たちが見守る中、滞りなく進む入学式で周りに気付かれないように溜息を吐き出した。