初恋大炎上 | ナノ
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「おとーさん!」


朝、寝惚け眼で起きてきて、俺の顔を見るなり抱っこをせがんできた息子をひょいっと持ち上げる。息子は今年で3歳になった。俺にそっくりなその顔は一見すると女の子みたいな可愛らしさで、近所ではかなりもてはやされている、らしい。俺の母いわく、俺の子供の頃のまんまなんだとか。確かに、昔のアルバムを見てみると、どれだけ似ているかは一目瞭然だった。

女の子みたいに可愛らしいという部分を少し複雑に思いつつも、腕の中の小さな存在が愛おしくて仕方がない。今も一生懸命に俺の肩へよじ登ろうとするその姿にくすりと笑みが溢れた。


「健司くんは……この子が大きくなったら、やっぱりバスケをして欲しい?」


後ろから聞こえたそれに、「うーん」と少し首をひねる。なんでも好きなことをやってくれればいいけど、そうだな、バスケを選んでくれたら嬉しいかもしれない。俺がそう言うと、名前も同じ気持ちだったようで、楽しげに肩を揺らしていた。

けれど「バスケをしてる人って、みんなかっこいいよね」と続けた彼女の言葉には、少し引っかかりを覚えた。すぐに頭の中で浮かんだのは、高野のにやけ顔だった。


「……最初は俺より高野だったもんなー」
「ふふ、そうだね。最初はね」
「高野ばっかり、見てた」
「昔の話だよ」


そんなつもりはなかったのに、責めるような言い方になった俺のことを見上げて、ふわりと微笑む名前。付き合ってからも、結婚してからも、息子が生まれてからも。この笑顔の破壊力だけは変わらない。


「もうずっと健司くんひとすじなんだけどなぁ」
「じゃなきゃ困る」
「……私って、愛されてるね」
「よくお気付きで」


息子を腕に抱えながら、もう片方の手を名前の方へ伸ばす。頬をやんわりと撫でると、一瞬照れた表情をした。名前はそっと目を閉じて、俺の口づけを受け入れる。

こんなに幸せな朝があっていいのかと頭の片隅で考えながら、いつのまにか腕の中で眠っていた息子の前髪をさらりと流した。


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