初恋大炎上 | ナノ
39



名前が近くにいないこの頃。寂しくないと言うと嘘になる。


「だからってそう何度も呼び出すな。俺だって暇じゃないぞ?」
「……でも結局来てくれるじゃねーか」


呆れたように肩を竦めた花形。

駅近くの喫茶店で仲良くお茶を飲む俺たちを、店内の女性らが遠巻きに眺めていた。その視線に気付きつつも、振り返ったりはしない。それこそキリがないからだ。


「名字がいないからって拗ねてる誰かさんを……放っとくのもな」
「さすが花形」
「おかげで休みが潰れた。あとで昼飯奢れよ」
「おう任せろ」


カチャリと静かに音を立ててコーヒーカップをソーサーに戻す。ただそれだけの動作も様になるんだから、こいつ、花形にはいつまでも敵わないような気がする。そういう大人の余裕というか、風格みたいなのが俺にもあれば……この心の寂しさも少しはマシになるのかもしれない。


「会えはしなくても、連絡は取ってるんだろ?」
「ああ。一昨日、手紙が届いた。電話もたまにする」
「へえ」
「…………なんだよ」


くつくつと喉を鳴らすようにして笑う親友。突然のことに少し戸惑う。なんだっていうんだ、急に。笑うところなんて無かった筈だけど。


「まるで片思い中の女子みたいだと思って」
「…………」


自分でも薄々感じていたことをズバリ言い当てられて返す言葉も無い。最近は、まさか自分がこんなに女々しいだなんてと考えることが多くて、けどそれだけ名前のことが好きなんだと納得するっていうのを繰り返していた。

そうしてまた名前への想いが募って会いたくなっちまう。そんな時、タイミングを見計らったかのように届く手紙でまた彼女を近くに感じられた。もしかして名前からは俺の心の葛藤が全部見え透いているんじゃないかとさえ思えた。


(はあ……会いてーな……)


「今も、会いたいって顔してる」
「っ、!」
「図星だな」
「……俺の心読むんじゃねーよ」
「まさか。顔に出すぎだ、昔から」
「あっそ」


思ってることを言い当てられることは昔からよくあった。それだけ花形との付き合いは濃いということで。まあ、それは他のバスケ部のメンバーにも言えることだけど。その中でもやっぱり花形は特別な気がした。



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