初恋大炎上 | ナノ
03



高野と同じクラスの俺はよくこいつと一緒にいるわけだけど。昼休み、俺たちの教室のドア近くから中をこっそりと覗いてる名字を見つけた。その隣には彼女の友達が付き添っている。


(……高野探してんのか)


名字がここへ来た理由は考えなくても分かった。彼女の手にはラッピングされたお菓子があったからだ。今日は家庭科を選択してるやつらが調理実習だったとかで、学校のそこいらから甘い匂いがしていた。そして俺の鞄にも、既にいくつかのクッキーやらマフィンやらが詰め込まれている。何度も呼び出されお菓子を手にしていた俺を羨ましげに見ていた高野のことだ、きっと名字からお菓子を貰えたら喜ぶだろうな。あいつ甘いもん好きだし。

ただ、高野は便所に行ってて今はいない。一生懸命に教室を見回す名字にそう伝えてやりたい気もしたけど、彼女とは話したこともなくて。俺だけが一方的に知ってる状態で話しかける訳にもいかず、ただ見守るだけだった。


(……お、戻ってきたぜ)


名字の向こうからスッキリ顔の高野がのそのそと歩いて来た。でけーからすぐに分かる。っておい、洗った手くらい拭けよ。つかハンカチくらい持っとけよ。せっかくお前のこと好きだって言う女子が目の前にいるのに。だからお前モテないんだよ。


(あーあ、顔真っ赤にしちゃって……)


結局、すぐ横を通り過ぎた高野に声をかけられないままとうとう動かなかった名字。高野の名誉のために言っておくが、彼女が固まったのは高野が洗った手を濡らしたまま歩いていたせいではない。

まあ次は頑張れ、と俺は緩む口元をそのままに名字の背を見送った。


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