初恋大炎上 | ナノ
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大学生活にも慣れてきた。学校とバイトとの兼ね合いが上手くなって、前より名前と過ごす時間が増えた。初めこそ照れてばかりいた彼女もようやく「恋人同士」という状況に慣れたのか、最近では街中で手を繋いでも、解かれたり俯いてしまうことは無かった。


「見て、健司くん!次はあれに乗りたいっ」


今日のデートの行き先は、かねてより名前の希望だったテーマパークだ。普段はどちらかというと大人しい彼女も、こういう場所ではずいぶんとはしゃいでいて。朝も早くから出かけたと言うのに、いつもよりテンション高めの名前が可愛くて俺も終始笑っていた。



「ねえ、あの人かっこよくない?」
「……隣の子、まさか彼女!?」
「うそでしょ!地味すぎるって」


パーク内を歩いていると、ここでも向けられる視線が多くて嫌になる。アトラクションの列に並べば、周囲のそれはさらに顕著になり、中には名前について中傷的な呟きも聞こえてきた。


「結構並ぶみたいだね……うわぁ、1時間待ちだって、大丈夫そう?」
「…………」
「……健司くん?」


俺が彼女を口説くのにどれだけ頑張ったかを知らない他人に、釣り合ってないだとか何とか言われてもまったく気にならないんだけど。ただ、俺のことだけならまだしも、名前のことをとやかく言われるのは腹が立つ。

これ以上ヒソヒソと好き勝手に言われても不愉快だ。そう思うが早いか、俺はぐいっと彼女の腰を引き寄せて、一瞬だけその唇に触れた。


「!、ちょ……健司くん、こ、こんなとこでっ」


ドン、と俺の胸を押して驚く名前を見下ろしながら、両手を上げて降参のポーズをした。んべ、とおどけて舌を出せば、彼女は目をつりあげて耳まで真っ赤になった。俺は普段なら人前でこんなことはしない……あー、まあ、卒業式のことは別として。ただ、周りの女に見せつけたかったんだ。俺は彼女以外は眼中に無いことを。おかげで名前はかなり拗ねてるみたいだけど……


(でも、拗ねた顔もいい)


キスの後、こちらを見て固まっていた周囲の人間にぐるりと視線をやって、にやりと微笑んで見せた。それからは気になるような不躾な視線や話し声もなく、俺は気兼ねしないで名前との会話を存分に楽しめたから、このうえなく大満足だ。

「次やったら、ほんとに怒るからね……」
「クク……はいはい」


と言いながら、照れているのか俺や周りから隠れるように、俺の肩に額を押し付けて俯く名前。人混みは好まないが、アトラクションの長い待ち時間も彼女とそれなりに密着して過ごせて、かなりいい気分だったのは言うまでも無い。


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