初恋大炎上 | ナノ
33



無事に高校を卒業した俺と名字、……いや、名前は、それぞれ県内の大学に通っている。今日は俺が名前の大学まで迎えに来て、そのあと一緒に出かける約束をしていた。彼女と会うのはなんやかんやで2週間ぶりくらいだ。そう思うと待ち合わせ場所に向かう足取りは速くなった。

俺たちが付き合いだしたことを、周りは大いに祝福してくれた。「やっとか」とくつくつ笑う花形に「こっち見るなよ」と照れる俺。それを茶化してきた高野には肩パンをして、みんなで笑い合った卒業式がまだ記憶に新しい。



「あの〜〜、ちょっといいですか?」
「どこの学部の人?うちらと遊びに行かない?」


大学の門を通ってから、向けられる視線が多いのには気付いてた。うぬぼれとか抜きで。まあそれも今までの経験上慣れてたし、いちいち相手にもしてられねーと思い無視してたんだけど。中庭のベンチに座って名前を待っていると、遠巻きに騒いでた女たちに声をかけられてしまった。


「……俺、彼女待ってるんで」


そう言って軽くあしらうと、あからさまに落胆した表情で背を向けていく。そんなやり取りがひっきりなしに続くもんだから、俺は「早くきてくれ」と心の中で名前を思い浮かべていた。人から好かれて悪い気はしないけど……目立ちすぎるのも困るよな。俺は人間、大事なのは中身だと思ってるから、今まさにこちらに近付こうとしてた「顔も服装も派手に着飾ったお姉さん」を横目に眺めながら、俺のこの見た目のどこがそんなにいいのかと溜め息を吐き出した。……もし高野がここにいたら「贅沢だぞ!」とかなんとか言われそうだ。


「健司くん!遅れてごめんねっ」


お姉さんに向かって口を開こうとした瞬間、反対側から息を切らせて現れたのは、俺が待ち焦がれていた恋人で。「待たせちゃったね……」と謝りながら、困り顔でチラチラとお姉さんの方を見ていた。俺は名前の姿を見た途端ゆるゆるになった頬を隠しもせず、さっと立ち上がり名前の背に手をやった。彼女が来たのならもうここに用はない。


「行こうか」
「うん、あ、でも……」
「いいから」


そう言って名前の手を引き、駅の方へ足を進める。隣で歩く名前は俺たちに向けられる好奇の視線を気にしつつ、そっと俺をのぞき見た。目が合った彼女に微笑みながら「ん?」と首を傾げれば、どこかホッとしたような顔をする。

名前は、特別に美人という訳じゃない。声をかけてきた人たちはみんな整った見た目をしていたしそれなりに自信があるんだろうけど、俺にとっては名前が特別で、唯一だ。美人だろうがなんだろうが、そこらで騒いでる女たちなんかよりも俺の彼女の方がよっぽどいいと思えた。


(……俺って幸せだよなぁ)


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