初恋大炎上 | ナノ
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名字のことを好きだと自覚してからは、告白もしたし出来る限りの想いも伝えたつもりだ。けれどなかなか彼女には頷いてもらえず。このままだと今日の卒業式を終えてしまえば、俺たちには同じ学校という接点も無くなってしまう。


(……これで最後、だな)


今でも名字のことが好きだ。この気持ちは変わらない。だから俺は、最後にもう一度、彼女に告白すると決めていた。本当の最後。これで駄目ならすっぱり諦めてやる……うん、たぶん。まあ、しばらくは引きずるだろうけど。もしそうなったら……花形とかに慰めてもらお。男の友情も大事だしな。




「……名字!」


式が終わり、いろんな学年の生徒で溢れる中庭で名字を見つけ出した。俺が名字に近付くと周りの奴らは気を利かせて俺たちから少し距離を取ってくれる。嬉しさ半分、居心地の悪さ半分でそれを眺めてから、目の前の彼女へ視線を合わせた。

そうしてすっと息を吸う。


「好きだ」


なんの前置きもなく、飾ったりせず、単刀直入に俺の素直な気持ちを口にした。いまさら俺の気持ちが冗談とか気まぐれだとかは思われない筈だから。この言葉だけで十分だと思っていた。


「……っ、……」
「!!おい、名字……泣いて……」


告白の答えは涙。彼女は俯いて肩を震わせ泣くばかりで、何も返事をしようとはしなかった。


(……そう、か)


握っていた拳を緩めると、体の力も一緒に抜けた。そしてその手を彼女の肩に添える。ああ、泣かせたかった訳じゃねーのに。今日まで何度も断られたけど、泣かれたのは初めてだった。


「俺が……悪かった。しつこかったよな、ごめんな、名字」
「……ち、ちがっ……う、の」
「お前にはずっと、自分の気持ち押しつけてた」


不思議と周りの騒つく声とかは聞こえなくて、俺の耳には名字が鼻をすする小さな音だけが届いていた。俺は彼女に謝りながら、そっとその顔を覗き込んだ。たとえ泣き顔でもしっかりと見ておきたかった。俺が初めて本当に好きになったひとのことを。


「頼むから……泣かないでくれ」
「…………」
「……えっと、名字?」
「…………」


身を屈めた状態で固まる俺。前髪から覗く名字の目はキッ、とこちらを睨みつけていて、俺は首を傾げるだけで声を出すことも出来ず。


(……あれ?なんか怒ってる……?)


気付くと、軽い衝撃とともに俺の胸の中に名字が飛び込んでいた。情けないことに、支えきれなかった俺はバランスを崩し、彼女を抱えたまま盛大に尻餅をついた。


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