初恋大炎上 | ナノ
25



「実は俺、彼女と別れたんだ」


ハハ、と笑った高野に言葉が出てこなかった。「独り身おかえり!」と盛り上がる友人たちの中で黙っていると、ちょうど教室の前を通りかかった名字の姿を見つけて、俺は静かに席を立った。

高野が彼女と別れたということはだ。名字にまた望みが出来たということで。それは俺にとっては、嬉しくないことで。


「……名字」
「藤真くん?どうしたの、怖い顔してる、けど」


彼女にそう言われて誤魔化すように微笑んだ。まだ頭の整理が出来なくて顔に出ていたらしい。名字に声をかけたのも殆ど無意識だったから次に何を切り出せばいいのか、自分でも分からなかった。


(……名字の気持ちを考えたら、高野のこと、教えてやるべきか……?)


でもそんなことして二人が付き合うようになっちまったら、しばらく立ち直れる気がしない。俺は、俺のために、さっき聞いたことは名字に黙っておくべきだ。高野のことは友達あるいは部活の仲間として好いてるけど、こと恋愛に関しては譲るつもりは無い。


「……私に何か用だった?」
「いや、名字と話したかっただけ」
「っ、そ、うですか……」
「今日は髪……しばってるんだな」


いつもおろしている綺麗な黒髪が、今日は少し高い位置でまとまっていた。ポニーテールってやつだ。口ごもる彼女に手を伸ばして、顔にかかっていた髪を耳へと流す。俺のその行動だけで、名字は耳を赤くした。なんだよそんなに照れてさ。こっちまで恥ずかしくなるじゃん。


「あの、それじゃあ、私いくね」


ふいっと顔を逸らして自分の教室に行ってしまった名字。それが照れ隠しだと分かりきっているから、俺の口元も緩む。鼻先にわずかに残ったシャンプーの香りがどうしようもなく愛しく感じた。


(やっぱ、好きだ……)


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