初恋大炎上 | ナノ
23



名字のクラスを通りかかったら、廊下側の席に座る彼女を見つけた。ひとりで真剣に雑誌を読んでいて、俺は気付かれないように背後へ近付く。

ざわざわと喧騒に包まれた教室の一角で名字だけは別の空間にいるみたいだった。俺が教室に現れたことで、すぐ隣にいた女子が「ひっ」と小さく悲鳴をあげた。なんだその反応、と苦笑いしながら口に指を添えて「シー」とジェスチャーをした。その子が首を縦に振ったのを見てから視線を名字の手元に落とす。当の本人は未だ俺の気配に気付かず、パフェ特集のページを食い入るように眺めていた。


(へえ……甘いもの、好きなんだ?)


この様子じゃ食いしん坊なのかな。それもいい、と頬を緩めながらそっと耳元へ顔を寄せる。


「それ、俺と一緒にどう?」
「!?えっ……あ、ふ、藤真くん!」


慌てて雑誌を閉じた名字は、ほんのり顔を赤くして振り返った。耳を押さえてじっと俺を見上げる姿に胸がきゅう、となった。


「ち、近いよ」
「……そうか?」
「みんな、見てるから……」


名字に言われて顔を上げると、たしかに教室のいたるところから視線が向けられていた。同じくこちらを見ていた花形は、やれやれと言いたげに腕を組んでいる。

あんまり目立つのも困るけどどうせ俺が彼女を好きなことはバレてる訳だし、と変に開き直る自分もいた。それに……名字にはこれくらい押さないと振り向いてもらえそうにないから。あえてもう一度顔を近づけて「ダメ?」と首を傾げてみた。

俺のストレートな誘いに周りからは「おおー」と歓声が聞こえてくる。その中には女子の悲鳴も少し混じっていた。一番肝心な名字はといえば「うっ」と言葉を詰まらせると、しばらく口をパクパクさせてから遠慮がちに俺を見上げた。


「か、考えときます……」


ああ、今日も駄目だったか。まだまだ彼女は俺に傾いてくれないようだ。


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