初恋大炎上 | ナノ
21



行動すると宣言した通り名字を見かけるたびに声をかけていた俺は、ある日、名字が居ないところで数人の女子に捕まっていた。


「前から気になってたんだけど……」
「藤真くんって、名前のこと好きなの?」


彼女たちには見覚えがあった。そう、たしか、いつも名字と一緒にいる友達だ。流石にこんなにあからさまなアプローチだとバレバレか、と内心苦笑いをする。まあ本当のことだし隠すつもりもないから「ああ」と頷いて肯定すると、なんだか知らないが「きゃーっ」とか「すごーい!」とか盛り上がっていて。そういや彼女たちは俺が一番とか言ってくれてたっけ?と朧げな記憶を辿る。

素直に気持ちを伝えたことに好感を持ってくれたのか、俺が何かを言う前に「応援するから!」と詰め寄られた。続けて「私も協力する!名前はいい子だよっ」と嬉しそうな声が聞こえてきて、その熱量に押されながら体の前に両手を出す。こんな風に女子に圧倒されるのは初めてだった。


「サンキュ……助かるよ」


笑ってそう言うと全員が一瞬固まって、バッと俺に背を向けた。なにやらヒソヒソと話し合う姿に首を傾げる。


「あー、やっぱかっこよすぎるよ王子!」
「大丈夫かな名前……あの子イケメンに興味ないし」
「まあ名前のタイプではないよね、藤真くん。かっこいいけど」


声を潜めてもこの距離にいると全部聞こえてるんだぜ、とは口にしない。高野を好きな時点で名字の好みが俺じゃないことは薄々分かってたけど。こうもハッキリ聞いてしまうとちょっと刺さる。グサッときた胸を軽く押さえて、俺はただ聞こえないふりをしていた。


(……あ、)


待ってる間、遠目に花形を見つけたので片手を上げた。花形は俺と俺の前できゃっきゃしている女子たちを交互に見ると、口元に手をやって笑っていた。なんとなく状況は読めたらしい。それから視線と口パクで「頑張れ」と言い残し、自分のクラスへ戻っていった。言われなくてもと心の中で返事をして、未だ話し込んでいる協力者たちに意識を戻した。


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