初恋大炎上 | ナノ
17



(雨……けっこー降ってんな)


土砂降りの放課後、今日は学校の都合だかなんかで部活動は全面禁止だった。バスケが出来ないのは残念だけどこればっかりはしょうがない。

どうせ帰ってもすることは無いし雨が弱まるのを待つのもいいかと、教室で適当に時間を潰した。ところが天気は悪くなる一方で、多分このまま待っていても回復などしないと諦めた俺は、人気の少ない廊下をひとり歩いた。昇降口から一歩踏み出すのも戸惑うほどの雨足。そういうわけでもう少しだけ様子を見ていたら、いつの間にかすぐ隣に誰かが立っていた。その姿を捉えてドキン、と心臓が高鳴る。


「名字……」
「あれ……藤真くんも、いま帰り?」
「おう」
「そっか。私もなんだ。日直の仕事が長引いちゃって」


そう言って微笑む名字。ザァザァと降る雨の薄暗い天気の中でも、なぜかその笑みは温かみを帯びていて。少し前、帰宅を先延ばしにした自分を褒めてやりたいと心底思った。だってそうじゃなかったら彼女に会えてない訳だし。いやほんと、ナイスだ俺。

そして好都合なことに、今ここには俺たちの他には誰もいなかった。つまりまた名字と二人きりだということ。


(……これは、一緒に帰る流れだろ)


絶好のタイミングに胸を躍らせていると、名字が「この雨の中を帰るのちょっとやだね」と呟いた。確かに、このまま外に出れば確実に濡れる。けど今の俺にはそんなことどうでも良く思えた。


「名字の家……どの辺なんだ?」


俺がそう聞くと彼女は僅かに首を傾げながら最寄駅を教えてくれた。なるほど。そこが俺が降りる駅のいくつか手前だと知り、心の中でガッツポーズをする。少なくともそこまでは一緒にいられるってことだ。そして何食わぬ顔で傘を開くと、頭にハテナを浮かべる名字を振り返って「行こうぜ」と笑いかけた。こういうのは得てして先に言ったもん勝ちだ。思った通り彼女は手に持っていた傘を慌てて広げ、俺の隣に並んだ。

濡れる肩も、足元をはねる泥も、まったく気にならない。まさか名字と一緒に帰れるなんて。今日の俺はついてる。最悪な天気も悪くないなと口元が緩んで仕方がなかった。


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