初恋大炎上 | ナノ
16



「あ……藤真くん、おはよう」
「おはよ……名字」


朝練を終えて教室に向かう途中、昇降口でばったり名字に会った。久しぶりだってのに、こないだの二人きりだったときのことを鮮明に思い出して一瞬で鼓動が早まった。けど、表面はあくまで平静を装う。そうじゃないと簡単に頬が緩んでしまいそうだからな。

そのままなんとなく二人並んで、教室までを一緒に歩く。不思議と途切れることなく会話が続き、俺たち相性いいよな、なんて考えて小さく笑う。こんな感じで俺の頭の中はかなり浮ついていた。


「へえ、そうなんだ……、っ……」


話の途中、こっちを見上げて照れ臭そうに目をそらした名字。もしかして、俺に泣き顔見られたことまだ気にしてるのか?それで照れてる?だとしたら可愛いすぎるだろ。とまあ、全部俺の予想でしかないんだけど。


「もう教室か……」


彼女の隣にいると時間の流れがいつもと違った。俺の教室に着くと、名字は少しホッとしたような笑みを浮かべ「またね」と手を振って隣の教室に入っていく。そういや彼女とは隣のクラスだったな。隣のクラスって割にはなかなか会うことがなくてすっかり忘れていた。

机にドサリと鞄を置き自分の席に座る。そんな俺の所へ、にやけ顔の高野と他に数人のクラスメートが近付いてきた。その楽しげな面々を少し鬱陶しく感じながら「なんだよ」とジト目を送れば、そのうちの一人が興味津々といった様子で口を開く。


「見たぜ、さっきの子!」
「あ?」
「一緒にいた女子のことだよ」


朝から男に囲まれたってハッキリ言って嬉しくはない。あまり詮索してくれるなという本音を込めてシッシッと片手を払うが、こいつらがその願いを聞き入れてくれる訳もなく。


「隣のクラスの……名字名前だっけ?」
「藤真が付き合うにしちゃ、ちょっと地味すぎねー?実はああいう子がタイプか?」
「まあ、藤真なら選び放題だもんな。誰かとは違って!」
「ハハッ!けど高野のはまじでミラクルだよなっ」
「ミラクルでいいから俺も彼女欲しー」
「おい、誰がミラクルだ!」


一気にそんなに話しかけられてもどれから答えりゃいいんだと溜息を吐きだす。そんな俺の態度に構うことなく好き勝手に盛り上がる友人たちを放って、俺は窓の外に視線をやった。どうでもいいけどとりあえず、名字のこと「地味」って言った奴は後で覚えてろよ。タイプで悪いかよ。まったく。


(……人の恋路を邪魔する奴らは馬に蹴られて何とやら、だ)


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