初恋大炎上 | ナノ
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人を好きになるきっかけなんて自分はもちろん他人にも分からないもんだ。笑顔が可愛かったからとか謙虚なところにグッときたからとかそういうのはあったけど、それが答えではない気がする。とまあ、きっかけ云々は置いといて、名字のことが好きだと自覚したならすることは決まってる。つまり告白しよう、と思う。思うんだけど。


(そうは言っても、な……)


「今の俺にはバスケがあるから」とかなんとか。今まで多くの告白をすっぱり断ってた手前、いまさら誰が好きなんてどの口が言うんだと自分でも思う。それに、高野に彼女が出来たこのタイミングで名字に告るってのは、なんだか失恋の弱みにつけ込むようで気後れしてしまう。なにより、俺は名字がどれだけ高野を想っていたか知っているから。


(俺って実はヘタレか?うわ、考えたくねー)


うだうだと唸っていると、ポンと誰かの手が肩に乗っかる。ビクリと体を揺らす俺に「驚きすぎだ」と花形が笑った。気がつくと、朝練前の更衣室に残っているのは俺たち二人だけで。他のやつらは既にコートに向かったみたいだ。急いで練習着に袖を通していると、着替えを済ませて腕を組んでいた花形が口を開いた。なんか企んでるような顔だ。


「悩み事か」
「うん、まあ、そんなとこ」
「名字のことだろう?」
「……さすが花形、なんでもお見通しだな」
「ククク、顔に書いてあるからさ」


中指で眼鏡をかけ直しながら、愉快そうに口元を緩める。こいつのことだからきっと俺がもう名字を好きになってることも、告白を迷ってることも、高野に引け目を感じてることも大体のことは分かってるんだろうよ。他人事にはちょっと気持ち悪いぐらい察しのいいやつだから。

やっぱり好きなんじゃないか、と笑われても何も言い返せない俺。聞かれた時はまだ好きじゃなかったんだよと心の中だけで反論した。それすら聞こえているかのような笑みから目を逸らす。なんか恥ずかしくなってきた。


「俺は、好きなら余計なことを気にする必要はないと思うぞ」
「……お前も知ってるだろ、あいつの気持ち」
「めずらしく弱気か?」
「そういう時もあるんだよ」


まさか負けず嫌いの俺が自分の弱気を肯定するとは思っていなかったという顔をされた。その長身の横をすり抜け、花形を置いてコートに向かう。胸の内をぐるぐるとしていた気持ちを振り払うように、俺はただひたすらゴールへ向けてボールを放った。


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