初恋大炎上 | ナノ
11



「藤真くん頑張ってー!」
「ナイッシュー、花形くんっ」
「……ねえ、藤真くんこっち見てない?」
「あんたそれ自意識過剰だよー?」
「絶対私の方見てたよぉ」


いや見てねーから。視界には入ってても特別見たりはしてない。頼むから応援するならもうちょっと目立たないところでやってくれ。きゃっきゃと楽しげな女子たちに半ば呆れながら、心の中で毒づく。そうして持っていたボールを指先でくるくる回しながら、一人の生徒に目を止めた。


(まーた高野のこと見に来てら……)


高野から彼女が出来たと報告された翌日、放課後の体育館には名字の姿があった。女子の塊の隅っこにいた彼女は、やっぱり高野しか見ていなくて。まだあの事は知らないのかとなんだかモヤモヤした。

昨日の夜は、自分が失恋したわけでもないのになかなか眠りにつけなかったし、名字の気持ちを思うとどうにも気分が晴れなかった。案の定どこか夢見も悪くて。


(……知ったら落ち込むだろうな)


練習をしながら、ちらちらと彼女を盗み見る。何も知らずにただひたすら高野を応援する姿がすごく健気に思えた。もう来ても無駄だぞ。高野には彼女が出来たんだから。さっさと他のやつを好きになった方がいいんじゃねーの……って、言えるものなら言いたいけど、俺と名字の関係じゃ口出ししようが無いし。

ハァ、と重い溜息をついた。すぐ近くにいた一志がひとりで考え込む俺を不思議そうに見ていたから、「気にしないでくれ」と肩を竦める。


(俺だったら……お前に告白されたら断らねえのにな。…………って、俺、何言ってんだ!?いやいやおかしいだろ)


ぶんぶんと頭を振って、一度深呼吸をする。
ダメだ。ぜんっぜん練習に集中出来ねえ。これじゃまるで名字のことが好きみたいだ。そんなことは、無い……無い筈だ。だって俺は名字の片思いを応援してたんだから。

……いやでもあれ?そういやこの頃バスケ以外はずっと名字のこと考えてる気がするぞ。あいつが何をしてるのかとか、何が好きでどういう時に笑うのかとか……つまりこれって、あれだよな。やっぱり惚れちゃってるってことなのかな。


(……そんなまさか)


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