SHORT | ナノ
ほわちゃあ!


学校が終わって家までの道すがら、いつも通る公園の前で足を止める。そこには今日もバスケをする少年達がいた。


「フクちゃん!パスくれよぉ!」
「ダンクは止めらんないって!」


中学生くらいの少年三人と、高校生くらいの大きな男の子が一人。わいわいと一つのボールを追いかけていた。



(いつも楽しそうにバスケしてるなあ)


私はそれをこっそり眺めながら時折笑いつつ、シュートが決まれば心の中で小さく拍手していた。目は自然と背の高い彼のことを追いかけていた。

その時ふいに、肩を誰かに叩かれて振り返る。


「君、可愛いねえ」
「何してんの?暇なら俺らと遊ぼーよ」


(うわ、絵に描いたようなヤンキー・・・)


人は見かけで判断出来ないっていうけど、こうまで分かりやすい人種もいるものなんだな。なんて呑気に考えつつ表面上は不快な気持ちをなんとか抑える。


「いえ、結構です」

「まあまあそう言わずにさァ」
「俺たち奢っちゃうよー?」


掴まれた肩が痛い。咄嗟にどうすれば逃げられるかを考えるけど、いい案は思いつかなかった。かと言って無理やりほどいても、逆上されたら困るし。

(大声だす?走る?)


「ほわちゃあ!」


バイン、と突然横からボールが飛んできた。それは見事にヤンキーの顔面にヒットして、投げた人の方へ転がって戻った。私は驚いて全く動けなかった。


「痛ぇな!」
「なんだテメェー!」

「・・・手が滑った」


片手でボールを掴むその人は、さっきまで公園でバスケをしてた男の子だった。後ろでは少年たちもこちらを伺っている。
ヤンキー二人が怒って男の子に詰めよるけど、その威嚇はまったく効いてないようだった。男の子は190近くあるだろう背と仏頂面が合わさって、なかなかの迫力があった。それに怖気付いたのか、「くそ、気をつけろ」とこれまたありきたりな捨て台詞を残して二人は退散して行った。


それを見届けると、少し離れたところにいた少年たちが男の子の元に駆け寄ってきた。


「フクちゃんカッケーじゃん!」
「背高いからすげー迫力!」


バスケをしてる時みたいにワイワイとはしゃいでいて、中心にいる男の子も満更でもないように見えた。
その内の一人の少年が「お姉さん、大丈夫?」と声をかけてきて、私は緩んでいた頬を慌てて戻した。




その日を境に私は彼らをただ眺めるだけじゃなくて、一緒に話したりバスケを教えて貰ったりしていた。聞いたところ、フクちゃんこと福田くんは私の一つ年下らしい。


「あ、名前ちゃんだ」
「ほんとだ。フクちゃん、名前ちゃんが来てるよ!」
「なんかごめんね、邪魔するつもりは無いんだけど・・・」
「・・・別に構わない、す」
「フクちゃん緊張してんの!?」


あの日から彼を、福田くんを、特別な気持ちで見るようになった。少しでも近づきたくて、私は足繁く公園に通うようになった。



「名前ちゃん絶対フクちゃんのこと好きだぜ」
「うん、絶対ね」
「俺たちが何とかしてあげないと!」
「フクちゃんも気になってると思うよ」


仲良くなった少年たちに協力してもらい、私が福田くんに告白するのは、もうちょっとしてから。



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