好きなタイプ
背が高い人が好き、唇が薄い人が好き、色白な人が好き、目が細ければもっと好き。そんな人、私の周りには一人しかおらへん。
「つまり、土屋くんが好き」
「へえ」
「・・・ちゃんと聞いてる?告白なんやけども」
「聞いとるけど」
「なんかないん?イエスとかハイとか!どっちかで!」
「あえてツッコミはせえへんよ」
目を細めてこちらを見る土屋くん。答えはノーや、なんて言って私に背を向けた。
(ああ冷たい!けど、そういうとこも好き・・・!)
「なんでダメなん?」
「名字は外見しか見てへんねやろ」
「うん」
「・・・」
私の即答に黙った土屋君。
(あれ、どうしたんやろ?)
「お腹痛いん?」私がそう聞くと、今度はとっても深いため息をついていた。
「・・・僕は、」
「土屋君は?」
「中身も見てくれる人がええの」
「うーん・・・」
今度は私が深いため息をつく番やった。彼は、土屋君は、ぜーんぜん分かってない。
「せやかて、土屋君の中身がええのはずっと前から知っとるもん」
もちろん中身を知ってる前提で、それも含めて彼は私のタイプやのに。好きな人の中身を知ろうとしないはずがないのに。そんな誤解で私を拒絶せんとって?
「わ、分かりにくいわ。てっきり、僕の見た目だけが好きなんやと・・・」
「見た目が特に!好きなんやって」
ていうか、内面がいい人はたくさんいるもん。でもその中でも、背が高くて唇が薄くて色白で目が細い、私のどストライクな外見は土屋君だけなんやで。こんなに理想の詰まった男の人は、土屋君しかおらんねん。
「そういうことなら、イエスや」
「・・・ん?」
「さっきの返事、イエスかハイのどっちかなんやろ」
「・・・つまり?」
「付き合うたるよ」
「!」
嬉しさと興奮で夢か現実か分からなくなった私は、とりあえず頬を抓って痛みを確認してから、思いっきり彼に飛びついた。
「ま、名前の外見は僕のタイプとは程遠いけどな」
「そんな土屋君も好き!」
「名前呼びすんの僕だけ?」
「じゃあ遠慮なく、淳君っ」
「なん?」
(大好きやで!)
(・・・恥ずかしい子)